「経営革新計画」という言葉を聞いたことはあっても、内容まで知らない方は多いと思います。
このページでは、中小企業庁「経営革新計画 進め方ガイドブック」(2025年6月公開版)を参考に、はじめて経営革新計画について調べる方に向けて、専門用語をできるだけ避けて説明します。
経営革新計画の基本的な仕組みから、承認によって受けられる具体的な支援措置、申請までの流れまで、実務の視点から整理してご紹介します。
経営革新計画とは
経営革新計画とは、中小企業が新たな事業活動に取り組む計画を都道府県知事等に申請し、承認を受ける制度です。根拠法は
「中小企業等経営強化法」にあります。
計画の承認を受けても、口座に直接お金が振り込まれるわけではありません。承認によって得られるのは、本ページで解説する融資優遇や補助金加点、信用保証の別枠設定といった、公的な優遇措置を「受けるための資格」です。
なお、経営革新計画の様式を埋める前に、事業そのものの骨子を整理しておくと申請書へ落とし込みやすくなります。
経営革新計画策定・承認のメリット
※支援策の詳細については、必ず最新の記載要領等をご確認ください。

※上記の制度内容・数値は、中小企業庁「経営革新計画 進め方ガイドブック」(2025年6月公開版)に基づいています。
制度は改定される場合がありますので、最新の情報は各実施機関の公式サイトでご確認ください。
補助金に有利!
経営革新計画承認企業だけが受けられる様々な補助金・助成金があります。
加点対象となる補助金も!
例えば、ものづくり補助金などで、審査時に加点の対象となります。
日本政策金融公庫からの低利融資
新規事業に必要な設備資金や運転資金を、特別利率で融資しています。
信用保証の別枠設定
経営革新計画の承認を受けた中小企業に対する、別枠保証の制度があります。
計画の承認を受けると、様々な支援策の対象になります。
ただし、いずれの支援策も、計画の承認によって自動的に受けられるものではありません。各支援策には、それぞれの実施機関による別途の審査がある場合が多い点にご注意ください。
特にニーズの高いものは下記となります。他にも多数の支援策がありますので、詳細は先の「経営革新計画 進め方ガイドブック」等をご参照ください。
(1)信用保証の特例
普通保証等について、別枠の保証枠が設けられます。(ただし、新規事業に必要な運転資金や設備投資のみが対象となり、既存事業分は対象外となります。)
| 保証の種類 | 通常の限度額 | 別枠 |
|---|---|---|
| 普通保証 | 2億円(組合は4億円) | 2億円(組合は4億円) |
| 無担保保証 | 8,000万円(うち特別小口2,000万円) | 8,000万円(うち特別小口2,000万円) |
(2)日本政策金融公庫の特別利率による融資
中小企業事業(新事業育成資金・新事業活動促進資金)と、国民生活事業の2つがあります。
| 制度 | 貸付限度額 | 貸付利率 |
|---|---|---|
| 新事業育成資金(中小企業事業) | 7億2千万円 | 基準利率▲0.9% |
| 新事業活動促進資金(中小企業事業) | 14億4千万円 | 基準利率▲0.65% |
| 新事業活動促進資金(国民生活事業) | 7千2百万円(うち運転資金4千8百万円) | 基準利率▲0.65% |
(3)一部補助金への加点
一部補助金について、経営革新計画の承認が加点要素となる場合があります。
加点要素の無い素晴らしい申請書が、加点要素をフルに使った平均的な申請書に負けることも多々ありますので、希望する補助金の記載要領をご確認ください。
また、経営革新計画の内容をそのまま(もしくは一部修正して)補助金の申請書にも転用できる場合があります。
対象となる事業者の基準

経営革新計画を申請できるのは、「特定事業者」に該当する会社・個人・組合等です。
会社・個人の場合、業種ごとに常時使用する従業員数の基準があります。
東京都・神奈川県での申請をお考えの方へ
経営革新計画の基本的な枠組みは全国共通ですが、実際の申請手続きや審査の運用は、都道府県ごとに異なる部分が
あります。
東京都での申請をお考えの方は「東京都特設ページ」を、神奈川県での申請をお考えの方は「神奈川県特設ページ」をあわせてご確認ください。
経営革新計画のポイントと流れについて


法律上、「経営革新」は次のように定義されています。
「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」(中小企業等経営強化法第2条第9項)
新事業活動とはいわゆる新規事業のことであり、「新規性」と「実現可能性」が問われます。
「新規性」では、「自社にとって新しい取り組みであること(既存事業と違うこと)」と、「他社と比較して新しい取り組みであること(差別化されていること)」の両方を満たす必要があります。
「実現可能性」は、言葉通り、新規事業が実際に実現可能か(財務面、人材面、組織面、技術面など多面的に判断)となります。
すでに他社で採用されている技術や方式でも、対象になる場合があります。
その事業者にとって新しい取り組みであれば、原則として承認の対象ですが、次の2点について、既に相当程度普及している場合は対象外となります。
➀ 業種ごとの、同業の中小企業における当該技術等の導入状況
➁ 地域性の高いものについては、同一地域における同業他社の導入状況
注意したいのは➁の「地域性の高いものについては」の部分です。➀と合わせて考えれば、地域性の高くない事業の場合は、全国の同業他社との差別化(業界としての新規性)がより強く求められる可能性が高いです。
一言でいうと、同業他社が当たり前に実施している(もしくは実施できる)取り組みは対象外となる可能性が高まります。
競合他社との差別化は必須と考えるべきです。
新規性と実現可能性の詳しい説明については、下記ページをご参照ください。


経営の相当程度の向上とは、要は計画上の数値目標のことで、経営革新計画では、事業期間終了時までに2つの指標を伸ばす計画を立てる必要があります。
① 付加価値額(又は一人当たりの付加価値額)の伸び率
② 給与支給総額の伸び率
この2つを一定水準まで伸ばす計画であることが、承認の条件となります。
(あくまで計画上の数字ですので、数値目標の達成義務が課せられるわけではありませんが、達成に向けた努力は継続するべきです。)
付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」で算出します。売上高だけでなく、雇用や投資も含めた企業活動全体を見る指標として使われています。
一人当たりの付加価値額は、付加価値額を従業員数で割って算出します。
給与支給総額は「役員報酬+給料+賃金+賞与+各種手当」の合計です。
なお、計画期間終了時点の付加価値額または一人当たり付加価値額は、正の値である必要があります。

新事業活動の5つの類型とは何か?

「新事業活動」は、次の5つの類型のいずれかに当てはまる取り組みを指します。ガイドブックでは、各類型について次のような具体例が紹介されています。
①新商品の開発又は生産:業務用の大型空気清浄機メーカーが、家庭用の小型製品を開発する例
②新役務の開発又は提供:美容室が、出張美容車でカットやヘアメイクを提供する例
③商品の新たな生産又は販売の方式の導入:果物小売業者が、フルーツパーラーを開店する例
④役務の新たな提供の方式の導入:タクシー会社が、乗務員に介護資格を取得させ移送サービスへ進出する例
⑤技術に関する研究開発及びその成果の利用:介護ロボットの研究開発と実証実験を行い、自社事業に活用する例

申請までの流れと必要書類
申請の手続きは、大きく4つのステップで進みます。
1. 都道府県担当部局等への問い合わせ
2. 必要書類の作成・準備
3. 申請書の提出
4. 都道府県知事等の承認
申請書の提出先は、申請代表者や実施主体の所在地によって異なります。(都道府県ごとに分かれています。)
複数の企業が共同で申請する場合、窓口が異なることがあります。
申請書の内容(別表1~7)について

別表は、計画の内容に応じて7種類ありますが、申請様式や申請手順は都道府県によって大きく異なります。必ず、申請者の所在地となる都道府県が公開している最新の記載要領をご確認ください。
別表1:経営革新計画の目標・実施体制・数値目標
別表2:実施計画と実績(実施項目・評価基準・実施時期)
別表3:経営計画及び資金計画
別表4:設備投資計画及び運転資金計画
別表5:組合等が研究開発等事業に充てる負担金の賦課基準
別表6:関係機関への承認書類の送付希望
別表7:中小企業経営革新事例集への掲載可否



承認後の活用イメージ|事例紹介
ガイドブックでは、経営革新計画を活用した4社の事例が紹介されています。

いずれも、経営革新計画の作成を通じて事業の内容が数値で見える化された点が共通しています。
数値目標を立てることで、経営判断がしやすくなったという声も紹介されています。

まとめ

経営革新計画とは、事業者が新たな取り組み(新事業活動)を通じて経営水準の大幅な向上を目指し、都道府県知事等の承認を受ける制度です。
計画の承認を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
新事業活動の実施:法律で定められた5つの類型のいずれかに該当する、自社にとって新しい取り組みであること。
数値目標の達成:計画期間内に「付加価値額」および「給与支給総額」について、定められた伸び率を達成する見込みがあること。
計画が承認されると、信用保証の特例や特別利率による融資、海外展開支援など、多彩な支援策の活用対象となります。ただし、各支援措置の利用には、それぞれの実施機関による別途の審査が必要です。
まずは制度の全体像を把握したうえで、自社の取り組みがどの類型に該当するかを整理し、現実的で妥当な数値目標が描けるか検討することから始めてみてはいかがでしょうか。
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