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経営革新計画の資金計画|設備投資・運転資金・減価償却費の正しい考え方

経営革新計画の計画書で、最も「詰まる」箇所の一つが資金計画

「いくら必要なのか」「どう計算すればいいのか」がわからないまま、感覚で書いてしまった結果、受付機関から修正を求められるケースが繰り返し見られました。この記事では、資金計画を構成する3つの要素(設備投資・運転資金・減価償却費)を整理し、審査員が納得できる計画書の書き方をお伝えします。

第1章 資金計画の3つの構成要素

資金計画は大きく3つに分かれます。

設備投資
備投資額

機械・設備・システム等の購入費用

運転資金
➁運転資金
事業を回すために必要な手元資金

減価償却
➂減価償却費
設備投資額を耐用年数で配分する。

この3つが財務計画の中で整合していることが、審査員が最初に確認するポイントです。

第2章 設備投資額の計上

2-1. 計上すべきもの・すべきでないもの

計上すべきもの
・新規事業のために新たに購入する設備
・システム・ソフトウェアの開発費

計上すべきでないもの
・既存事業で使用している設備の維持費
・既存設備の修繕費や設備更新費用

2-2. 見積書を取る

設備投資額は「見積書」を根拠として添付することが最も説得力があります。

・金額の根拠があるか

・新規事業に必要な設備か

導入時期と実施計画の整合


第3章 運転資金の計算

3-1. 運転資金の基本的な考え方

運転資金とは、事業を回すために必要な手元資金です。売上が入ってくるまでの「立て替え金」と考えると理解しやすいです。

基本的な計算式は以下の通りです。

必要運転資金 = 売上債権(売掛金・受取手形) + 棚卸資産(在庫) - 仕入債務(買掛金・支払手形)

3-2. 経営革新計画における運転資金は2種類ある

経営革新計画の資金計画では、運転資金を2種類に分けて考えることが重要です。

種類① 経常運転資金(日々の事業を回すための資金)

性格計算計算例
日々の支払いのズレを埋めるもの売上高や回転期間から算出新事業の月商 × 資金立替期間
(回収サイト – 支払サイト)

種類② 研究開発・立ち上げ期間の資金(プロジェクト型資金)

性格計算対象となる費用計算方法
新事業を形にするための投資的資金完了までの所要期間の総額・人件費
・試作品の材料費・外注費
・専門家への委託費
・広告宣伝費
・新事業のための採用費
月額経費 × 開発にかかる月数 = 総額

まとめ

資金の種類性格計算の根拠
経常運転資金日々の支払いのズレを埋める売上高・回転期間から算出
研究開発資金新事業を形にするための投資完了までの所要期間の総額

3-3. 運転資金の目安:月商の2〜3ヶ月分

計算が複雑になりすぎる場合の「落としどころ」があります。

月商の2〜3ヶ月分が、金融機関・保証協会が妥当性を判断する際のベンチマークです。

  • 【1ヶ月分】ギリギリ(突発的な支払いでショートする恐れあり)
  • 【2〜3ヶ月分】標準的(商売を回すのに必要な適正水準)
  • 【6ヶ月分以上】なぜそんなに必要なのか?という疑問が生じる(在庫過剰・回収遅延の懸念)

計画書への書き方はこうなります。

「新事業の開始に伴い、売掛金の回収サイトと 仕入の支払サイトのズレを考慮し、 安全な事業継続のために月商の3ヶ月分に 相当する○○万円を運転資金として計上する。」

「安全な事業継続のため」という言葉を添えることで、計算の根拠として十分に機能します。

3-4. 研究開発を伴う新規事業の場合はさらに「立ち上げ費用」を加える

運転資金の合計:
➀ 既存事業の維持分 → 月商の2〜3ヶ月分
➁ 製品化までの期間 →  軌道に乗るまでの赤字補填額(総額)
➂ ➀➁を合計して「運転資金」として提示する

3-5. 経営革新計画で最も多い「運転資金の過大計上」ミス

実務上、最も多かった修正事例の一つです。

運転資金は「新規事業により増加する分のみ」が計上対象です。

【よくある間違い】既存事業の運転資金も含めて計上してしまう

【正しい考え方】
既存事業はすでに回っているためその分の運転資金は不要。新規事業により増加する分のみを計上

第4章 減価償却費を忘れてはいけない

4-1. なぜ減価償却費が重要なのか

設備投資をした場合、その費用はすぐに全額が費用になるわけではありません。耐用年数にわたって毎年少しずつ費用として計上されます。これが減価償却費です。

経営革新計画の財務計画において、減価償却費を忘れると以下の問題が発生します。

問題①:費用が少なく見えて利益が過大に計上される → 実現不可能な計画になる

問題②:付加価値額の計算が狂う
    付加価値額 = 営業利益+ 人件費+ 減価償却費
    → 減価償却費を計上しないと付加価値額が正確に計算できない

4-2. 計算方法

定額法(最もシンプル):取得価額 ÷ 耐用年数 = 年間減価償却費

例:
1,000万円の設備を10年で償却する場合
1,000万円 ÷ 10年 = 年間100万円

計画期間(5年)の減価償却費:100万円 × 5年 = 500万円

主な設備の法定耐用年数の目安

機械装置:7〜17年(業種・用途による)
工具・器具・備品:5〜10年
ソフトウェア:3〜5年
建物附属設備:15年

詳細は国税庁の耐用年数表で確認してください。

4-3. 財務計画への組み込み方

設備投資を計画書に書く際の手順

Step 1:設備の取得価額・耐用年数を確認する
Step 2:
年間減価償却費を計算する
Step 3:財務計画(損益計算書)に毎年の減価償却費を計上する

Step 4:付加価値額の計算に減価償却費を含めていることを確認する


第5章 信用保証協会の活用

5-1. 信用保証協会とは

信用保証協会は、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、債務保証をする公的機関です。保証協会が保証することで、担保・実績が少ない中小企業でも融資を受けやすくなります。

5-2. 経営革新計画の承認による特例

経営革新計画の承認を受けた企業は、信用保証の特例として以下の優遇を受けられます。

①普通保証等の別枠設定
 通常の保証枠とは別に、追加の保証枠が設定される

②新事業開拓保証の限度額引き上げ
 新事業のための資金について保証限度額が引き上げられる

5-3. 重要な注意点

承認は「保証を保証するもの」ではありません。

融資・保証を受けるためには:
・承認後に保証協会・金融機関の審査を別途受ける必要がある
・既存事業の安定性・財務状況も審査される
・「承認があれば必ず融資が受けられる」という誤解は禁物

5-4. 資金調達の現実的な考え方

➀ 実効性のある計画でなければ、融資する金融機関はいません。
  「実態の見えない計画」に融資する金融機関はいない、という現実があります。
➁ 低利融資は新規事業分にしか適用されないため、中身のない計画では制度のメリットを享受できません。
➂ せっかく申請するのであれば、実際に事業として機能する計画を作ることが最も合理的な選択です。


まとめ(資金計画の4つのポイント)

設備投資は見積書を根拠に計上

新規事業に必要なものだけ

運転資金は2種類に分けて考える

➀ 経常運転資金(月商の2〜3ヶ月分)
➁ 研究開発・立ち上げ資金(総額)

減価償却費を必ず計上する

付加価値額の計算にも影響する

「新規事業分のみ」が原則

既存事業分を混入させない

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