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新モノ補助3枠を比較|革新的新製品・新事業進出・グローバルの選び方

新モノ補助は「補助額が大きい枠」を選ぶ制度ではない

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(以下「新モノ補助」)には、次の3つの申請枠があります。

革新的新製品・サービス枠
新事業進出枠
グローバル枠

3つの枠は補助上限額が異なるため、「できれば補助額の大きい新事業進出枠を使いたい」と考えるかもしれません。
しかし、実際には補助額の大小ではなく、取り組む事業の内容によって申請枠を選ぶ制度です。

大まかに整理すると、

新しい製品・サービスそのものを開発する → 革新的新製品・サービス枠

新しい製品・サービスによって、これまでとは異なる顧客市場へ進出する → 新事業進出枠

自社の製品等を活用して、新しい海外市場を開拓する → グローバル枠

という違いがあります。公式も、3つを「自社の事業展開の目的に合わせて選べる補助対象事業枠」と位置付けています。 (新事業進出・ものづくり商業サービス)

特に分かりにくいのが、革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠の違いです。
本ページでは、この2つを中心に3枠の違いを整理します。

まず3つの枠を比較

第1回公募時点の大きな違いをまとめると、次のようになります。

比較項目革新的新製品・サービス枠新事業進出枠グローバル枠
主な目的新製品・新サービスの開発新しい市場への事業進出新しい海外市場の開拓
製品・サービス革新的であることが重要自社にとって新しいこと既存製品等でも対象になり得る
顧客・市場市場新規性は独立要件ではない自社にとって新しい市場が必要自社にとって新しい国・地域が必要
開始時期新事業進出枠と同じ明示的ルールはない公募開始日以降に初めて取り組む事業海外市場の新規性等を確認
新市場性・高付加価値性新事業進出枠固有の審査項目ではない重要な審査項目新事業進出枠とは別の審査構造
建物費対象外対象対象
必須となる投資機械装置・システム構築費機械装置・システム構築費または建物費機械装置・システム構築費または建物費
基本補助率1/2または2/3原則1/22/3
最大補助上限2,500万円7,000万円7,000万円
補助下限100万円750万円750万円

※補助率・上限額には企業規模や特例による違いがあります。上表は制度の違いを理解するための概要です。第1回公募では、革新的新製品・サービス枠は最大2,500万円、新事業進出枠とグローバル枠は最大7,000万円で、一定の賃上げ特例適用時にはそれぞれ上限が引き上げられます。
この表だけを見ると新事業進出枠の方が有利に見えますが、要件の構造そのものが異なる点に注意が必要です。

革新的新製品・サービス枠とは

革新的新製品・サービス枠は、顧客等に新たな価値を提供することを目的として、自社の技術力等を活かした新製品・新サービスを開発する取組を支援する枠です。
単に新しい機械を導入したり、生産工程を改善したりするだけでは対象になりません。

設備投資によって、
これまで提供していなかった製品・サービスを開発する
ことが中心になります。
さらに、この枠では「自社で初めて」というだけでは十分ではありません。
公式には、同業の中小企業者等ですでに相当程度普及している製品・サービスは対象にならないとされています。地域性の高い業種では、同一地域の同業他社の普及状況も考慮されます。

したがって、

自社ではやったことがない

だけでなく、

顧客にどのような新しい価値を提供するのか
自社のどの技術・ノウハウを活用するのか
同業他社ですでに一般的になっていないか

まで確認する必要があります。

新事業進出枠とは

新事業進出枠では、事業で新たに製造・提供する製品・サービスが自社にとって新しいことに加えて、その製品・サービスが属する市場も自社にとって新しい市場である必要があります。
ここでいう製品・サービスの新規性は、日本初・世界初という意味ではありません。
あくまで申請企業にとって新しいかどうかが基本です。
一方、市場については、既存事業では対象としていなかったニーズ・属性を持つ顧客層であることが求められています。
例えば、
「今まで取引のなかった会社へ売る」
というだけでは、必ずしも新しい市場とはいえません。

既存事業の顧客と、新規事業の顧客について、
どのようなニーズ・属性が違うのか
を説明できることが重要になります。

製品・サービスの「革新性」と「新規性」は何が違う?

この2つは似ていますが、新モノ補助では少し意味が異なります。

革新的新製品・サービス枠の「革新性」新事業進出枠の「製品等の新規性」
基本的な視点顧客への新たな価値や自社技術に加え、同業他社への普及状況も見るまず自社にとって新しい製品・サービスかを見る
他社がすでに行っている場合同業の中小企業等に相当程度普及しているものは対象にならない他社が行っていることだけで直ちに対象外とはならない
日本初・世界初必須ではないが、単なる自社初では足りない求められていない

革新的新製品・サービス枠では、顧客に新しい価値を提供するため、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発することが求められ、同業の中小企業等ですでに相当程度普及しているものは対象になりません。

一方、新事業進出枠の「製品等の新規性」は、申請企業にとって新しいかが基本で、日本初・世界初である必要はありません。ただし、既存製品の単純な増産、過去製品の再製造、製造方法だけの変更などは新規性に該当しません。

したがって、簡単に整理すると、

新規性=自社がこれまで行っていなかった製品・サービスか
革新性=自社にとって新しいだけでなく、新たな顧客価値や同業他社との違いまで説明できるか

という違いです。

「新事業進出枠=革新的枠の上位版」ではない

ここは、3枠を選ぶ際に特に注意したいところです。
新事業進出枠は補助上限額が大きく、建物費も対象になるため、革新的新製品・サービス枠より規模の大きな事業に使いやすい制度設計になっています。

しかし、

革新的新製品・サービス枠
↓
より新規性が高い事業なら新事業進出枠

という上下関係ではありません。
両者は単純な厳しさの違いではなく、確認する「新しさ」の基準が異なります。

革新的枠では、

  • 顧客への新たな価値
  • 自社の技術力等の活用
  • 同業の中小企業等への普及状況

まで確認されます。

一方、新事業進出枠における製品・サービスの新規性は、基本的には自社にとって新しいことが出発点です。
ただし、だからといって新事業進出枠の方が簡単という意味ではありません。

新事業進出枠には、さらに、

市場の新規性
事業開始時期
新市場性または高付加価値性

など、別のハードルがあります。

つまり、

革新的新製品・サービス枠は「製品・サービスの革新」を強く見る

新事業進出枠は「新しい事業市場へ進出すること」を複数の条件から見る

という違いです。

新事業進出枠では「市場」が重要

例えば、ある機械部品商社が、これまで取引していた製造業者向けに新しい保守サービスを始めるケースを考えます。
サービスそのものは自社にとって新しくても、

顧客もこれまでと同じ製造業者で、解決するニーズも従来事業と大きく変わらない

のであれば、新事業進出枠の「新しい市場」の説明は弱くなる可能性があります。

一方、これまで製造業向けに事業を行っていた企業が、
物流倉庫、食品工場、医療施設
など、異なるニーズを持つ顧客層へ新しい製品・サービスを提供するのであれば、市場の違いを説明しやすくなります。
重要なのは、

商品が新しいから、市場も新しい

とは限らないということです。

製品・サービスの新規性と市場の新規性は、分けて確認する必要があります。

新事業進出枠では「開始時期」にも注意

新事業進出枠にはもう一つ重要な違いがあります。
公式では、申請予定公募回の公募開始日以降に初めて取り組んでいる事業について「新規性」を有するものとみなすとされています。

そのため、

事業構想を考える
市場調査をする
顧客ヒアリングをする
試作する
顧客に試作品を見せる
PoCを行う
広告する
契約する
販売する

といった各段階について、どこから「事業に取り組んでいる」と判断されるのかが問題になります。

特に、

無償PoC
試作品の顧客提供
予約受付
契約済みだが売上はまだない

といったケースは、単純に判断しにくい部分です。
この点は、公式に明示されている内容と、現時点では判断が難しい部分を分けて整理します。

新規性・市場・開始時期のグレーゾーン【新規事業創出枠】

「市場の新規性」と「新市場性」は同じではない

新事業進出枠では、特に混同しやすい言葉があります。
市場の新規性と新市場性です。
市場の新規性は、

自社の既存事業では対象としていなかったニーズ・属性を持つ顧客市場か

という、主に自社との関係を見るものです。

一方、新市場性は、

新製品・サービスが属するジャンル・分野について、社会一般での普及度や認知度が低いか

を見る審査上の考え方です。
したがって、「自社にとって新しい市場だから、新市場性もある」とは限りません。

新市場性では「都合のよい市場の細分化」はできない

新市場性を説明する場合、製品・サービスのジャンル・分野を設定し、そのジャンルの社会的な普及度・認知度を説明する必要があります。

このとき公式資料では、

性能・サイズ・素材・価格帯・地域性・業態・顧客層・効果

などによってジャンルを細かく区切ることは適切ではないとされています。

例えば、
「高所得者向けプライベートサウナ」
を一つの新しいジャンルとして考えるのではなく、「サウナ」というより広いジャンルで普及度を見る、という考え方です。

そのため、

自社の商品には特徴がある
↓
だから新市場である

とは限りません。
新市場性を主張する場合には、客観的なデータや統計等によって、対象ジャンルそのものの普及度・認知度が低いことを説明する必要があります。

新市場でなくても「高付加価値性」という考え方がある

新事業進出枠では、新市場性だけが評価ルートではありません。
公式の「新市場・高付加価値事業の考え方」では、

新市場性がある または 高付加価値性がある

事業について、新事業進出の事業計画として評価する考え方が示されています。

高付加価値性では、
同じジャンル・分野の一般的な付加価値や相場価格を調査したうえで、
自社の新製品・サービスが高水準の高付加価値化・高価格化を実現できるか
を確認します。

その際には、

なぜ高い付加価値を生み出せるのか

という価値・強みの源泉まで分析する必要があります。
つまり、「価格を高く設定しました」だけでは不十分です。

技術、ノウハウ、機能、品質、代替困難性など、価格や付加価値を支える理由が必要になります。

グローバル枠は他の2枠とは少し性質が違う

グローバル枠は、革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠とは少し分けて考えた方が理解しやすい枠です。
対象となるのは、
自社の製品等を活用して、自発的に新しい海外販路を開拓するために国内の製造等拠点を強化する事業
です。

新製品の開発そのものが必須というわけではありません。
既存製品を使って新しい海外市場へ展開する事業も対象になり得ます。

一方で、取引先から依頼されたから海外向け生産を増やすといった取引先主導の事業は対象外です。
また、新しい海外市場とは、既存事業で対象としていなかった国・地域を指します。
ここでいう「地域」は、単なる州や都道府県のような行政区画ではなく、統計上国に準じて扱われる領域です。

商社経由、過去の少量輸出、サンプル輸出などについては論点が多いため、下記リンク先【準備中】で詳しく整理します。

【準備中】グローバル枠について

建物費を使いたい場合も枠選択に影響する

投資内容にも大きな違いがあります。
革新的新製品・サービス枠では、機械装置・システム構築費が必須で、建物費は補助対象ではありません。

一方、新事業進出枠とグローバル枠では、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかを補助対象経費に含める必要があり、建物費も対象になります。

したがって、大規模な新事業拠点の整備など、建物投資を伴う事業では、新事業進出枠またはグローバル枠との適合性を検討することになります。

ただし、

建物費を使いたいから新事業進出枠を選ぶ

という順序ではありません。
まずその事業が新事業進出枠の要件を満たしていることが前提です。

補助額だけで枠を選ばない

第1回公募では、最大補助上限額だけを見ると、

革新的新製品・サービス枠は2,500万円
新事業進出枠とグローバル枠は7,000万円

となっています。
一定の賃上げ特例を利用した場合は、それぞれ最大3,500万円、9,000万円まで引き上げられます。
しかし、補助額の大きい枠へ無理に事業を合わせるのは避けた方がよいでしょう。

例えば、
既存顧客向けの革新的な新サービスなのに、

「新事業進出枠の方が補助額が大きいから」

という理由で顧客市場を無理に細分化して、新しい市場であると説明しようとすると、計画全体が不自然になる可能性があります。

まず、
どの枠なら事業の新規性を最も自然に説明できるか
を考え、その後に補助額や対象経費を比較する方が、事業計画としても一貫しやすくなります。

申請枠を選ぶときの考え方

現時点では、次の順番で考えると整理しやすいでしょう。

ただし、これはあくまで最初の整理のための簡易フローです。

実際には、

革新的新製品・サービス枠では同業他社への普及状況
新事業進出枠では市場の新規性・開始時期・新市場性または高付加価値性
グローバル枠では新しい海外市場と自社主導性

などを追加で確認する必要があります。

迷ったときは「何を新しくする事業なのか」に戻る

3つの枠の名称や補助額から考え始めると、かえって分かりにくくなることがあります。
その場合は、

この事業では、何を新しくするのか

に戻って考えると整理しやすくなります。

製品・サービスそのものなのか。
顧客・市場なのか。
海外市場なのか。

そして、
誰に、どのような価値を提供する事業なのか
まで整理すると、申請枠との適合性も見えやすくなります。
補助金に合わせて事業を作るのではなく、まず事業の中身を整理し、その事業に合う制度を選ぶという順序が基本です。
この部分は、新モノ補助だけでなく、新規事業を考える際にも共通します。

「新規事業(新製品開発)の進め方]

まとめ|3枠の違いは「新しさの対象」で考える

新モノ補助の3つの申請枠は、補助額の大小だけで選ぶものではありません。
整理すると、

革新的新製品・サービス枠
→ 製品・サービスの革新を中心に考える。

新事業進出枠
→ 自社にとって新しい製品・サービスと、新しい顧客市場への進出を組み合わせて考える。

グローバル枠
→ 自社主導による新しい海外市場の開拓を考える。

という違いがあります。
特に革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠については、どちらが「上位」という関係ではありません。

自社が取り組む事業について、
何が新しいのか
誰に提供するのか
どの市場へ進出するのか
を整理したうえで、最も自然に要件を満たす枠を検討することが重要です。