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新規事業の進め方|アイデア創出から事業化までのプロセスを解説

新製品開発・新規事業創出の進め方|自社に合った事業開発プロセスを考える

本ページで紹介しているプロセスを事例に当てはめたページやQAも公開しております。
併せてご覧ください。

➀【事例で見る】新製品開発・新規事業創出の進め方
➁【事例分析】新規事業創出の失敗パターンとリスク
➂ 新規事業(新製品)開発に関するFAQ

また、新規事業開発後の【事業化】に関する記事も公開しております。

― 新規事業に「唯一の正しい進め方」はありません ―

「新しい商品を開発したい」
「既存の技術を生かして、新しい事業を始めたい」
「今の事業は安定しているが、5年後、10年後を考えると不安がある」

新規事業を考え始めるきっかけは、会社によって違います。

そして、新規事業について調べ始めると、PEST、SWOT、3C、STP、ビジネスモデルキャンバスなど、さまざまなフレームワークや事業開発手法が出てきます。
ただし、最初に押さえておきたいことがあります。

どの企業の、どのような状況にも当てはまる、新規事業の成功法則はありません。

会社によって、

  • 既存事業
  • 顧客
  • 技術やノウハウ
  • 人材
  • 投資できる金額
  • 新規事業に使える時間
  • 狙う市場
  • 事業の不確実性

が違うためです。

このページで紹介する流れも、「この順番なら成功する」というものではありません。
あくまで、新規事業を考える際の一例です。

フレームワークを使うこと自体を目的にするのではなく、

自社では何を考える必要があり、そのためにどの道具を使うか

という順番で考えることが大切です。

フレームワークの落とし穴

フレームワークは、考え方を整理し分析するといった視点では有用なケースが多いですが、

  • フレームワークを埋めることが目的化し、本来掘り下げるべき顧客の課題への洞察が不十分となる
  • 逆に、フレームワークをほとんど使わず、顧客との対話から事業が固まったケースも多い
  • フレームワークに拘った結果、逆に斬新なアイデアが出ずらくなる

などといったデメリットにも注意する必要があると考えます。
単純にフレームワークを順番に当てはめるだけでは、競合他社でも同じ発想に至る恐れも出てきます。
このため、「顧客の課題をどう解決するか」の視点は常に頭の中においておくべきと考えます。

また、このページでは、顧客ニーズ視点(ニーズ志向)で考えることを強調していますが、自社で提供できるソリューション(シーズ志向)で成功した例も多々あります。重要なのは、最終的に「顧客の課題があり、それを解決するソリューションが自社で提供でき、かつそれに独自性や優位性がある状態」となることで、そこに到れるのであれば、どれを採用しても構わないと考えています。

目次

1.なぜ今、新規事業を考えるのか
2.新規事業がうまく進まない3つの理由
3.既存企業では、個別のアイデアより先に方向性を考える
4.新規事業の全体方針を7つの視点で整理する
5.新規事業は「自社が作れるもの」だけを出発点にしない
6.顧客の課題を深く掘り下げる
7.PEST分析で「世の中の変化」を見る
8. SWOT分析は「強み探し」で終わらせない
9. 3C分析で「顧客・競合・自社」を考える
10.事業構想には複数の入り口がある
11. 狙う領域を絞る(STP・ポジショニングマップ)
12. 「やりたいこと」から「やるべきこと」へ
13.ターゲット・シーン・ベネフィットを具体化する
14.アイデアは「広げてから絞る」―635法・KJ法
15.製品・サービスのコンセプトを具体化する
16.「モノ」ではなく「コト」まで考える
17.技術課題と事業化課題を分けて考える
18.4P分析で「売れる仕組み」まで確認する
19.不確実性に応じて挑戦する領域を決める
20.自前で進めるか、外部と組むか
21.早い段階で試し、修正する
22.経営革新計画や支援制度につなげる
23.事業化できなかった経験も会社に残す
24. 新規事業のテーマは「思いつき」から作らない
25.まとめ―このページの方法も「一例」です
26. 「自分たちで考えられる会社」へ
27. 代替・補完できるフレームワークの例
28. 新規事業について、こんなお悩みはありませんか?

1.なぜ今、新規事業を考えるのか

既存事業が順調であれば、

「今、新規事業をやる必要があるのか」

と思うかもしれません。

しかし、どのような事業でも、同じ市場・同じ商品・同じ顧客構成のまま永遠に成長を続けられるとは限りません。
少子高齢化や人口減少、人手不足、技術革新、顧客ニーズの変化などによって、これまで安定していた事業の前提そのものが変わることがあります。

だからといって、既存事業とまったく関係のない事業へ進出すればよいわけでもありません。

既存企業には、

  • 顧客との関係
  • 技術
  • ノウハウ
  • 業界知識
  • 設備
  • 人材
  • 信用
  • 販売網
  • 安定した収益基盤

があります。

これらは、新規事業に取り組む際の大きな優位性です。
特に中小企業では、まったくゼロから競争力を作るより、「既存事業で培った経営資源を別の顧客課題に結びつける」
方が、独自性を作りやすいことがあります。

新規事業と既存事業とのシナジーは、単に効率を良くするためだけではなく、

「なぜ、この会社だからこの事業ができるのか」

を説明する材料にもなります。

【コラム】
新規事業を開発するにあたって、既存事業との関連の強さは意識しておく必要があります。例えば、新しい顧客に新しい製品を提供する新規事業は、高リスク・高リターンに分類されますが、その中でもさらに既存事業のノウハウを活用できない領域だと、新規事業開発というよりも創業に近い性質となり、さらにリスクが高まります。

2.新規事業がうまく進まない3つの理由

新規事業が進まない原因を、「良いアイデアが出ないから」だけで説明するのは難しいと思います。
大きく分けると、次の3つの問題があります。

① ビジョンや新規事業開発の方針・戦略がない

会社としてどこへ向かうのかが決まっていない状態で、「とにかく新しいアイデアを出そう」と始めても、出てきたアイデアを評価する基準がありません。

面白そうだから採用するのか。
既存事業との相乗効果を見るのか。
5年後の主力事業候補を探すのか。
既存市場の縮小を補うためなのか。

目的によって、選ぶ事業は変わります。

だからこそ、

なぜ今、自社が新規事業に取り組むのか

を先に考える必要があります。

② 「良質な多産多死」を実現できる組織になっていない

新規事業は不確実性が高く、最初に考えた案がそのまま成功するとは限りません。
「センミツ」という言葉が使われることがあるように、新しい事業や商品は、多くの試行の中から一部が残っていくものだと考えた方が現実的です。
だからといって、無計画に大量のアイデアを出せばよいわけではありません。

重要なのは、

仮説を作る → 試す → 学ぶ → 次に生かす

という質の高い試行を繰り返すことです。

また、新規事業の担当者を減点方式で評価すると、「失敗しない案」を選びやすくなります。
これは、新規事業とは相性がよくありません。チャレンジした結果を正当に評価する仕組みの構築は必須と考えます。
また、中小企業では、担当者を完全専任にするのが難しいこともあります。
その場合でも、

新規事業だけに集中できる時間を、会社として意識的に作る

ことは必要です。
例えば週のうち一定時間を新規事業に充て、その時間には既存業務を持ち込まない、といった運用も考えられます。
さらに、採用されなかった案や失敗した検証についても、「失敗したから捨てる」のではなく、

  • 仮説
  • 調査結果
  • 顧客の反応
  • 採用しなかった理由
  • 次回に生かせる知見

を残しておくことが重要です。

【コラム】
人手が足りない中小企業では、既存事業と新規事業の担当を兼任させることが多いと思います。兼任そのものに対しては一切否定しませんが、忙しくなるほど新規事業に割ける時間が少なくなり、プロジェクトが進まなくなりがちです。
このため、あらゆる事業はいずれ衰退するという前提に基づき、新規事業に取り組む重要性を全社的に共有し、新規事業を後押しする雰囲気を作ることはとても重要と考えます。

③ 自社の性質や不確実性に応じたプロセスになっていない

既存顧客向けの新商品開発と、まったく知らない市場への進出では、必要な検討は同じではありません。
にもかかわらず、
「本にこの手順が書いてあるから」
「有名企業がこの方法を採用しているから」
という理由だけで同じプロセスを使うと、かえって回り道になることがあります。

事業の性質に合わせて、

  • どこまで調査するか
  • 何を試作するか
  • どの段階で顧客に見せるか
  • どこまで投資するか

を変える必要があります。

3.既存企業では、個別のアイデアより先に方向性を考える

スタートアップでは、一つの強い事業構想から会社そのものを作っていくことがあります。一方、すでに既存事業を持っている企業では事情が違います。
既存顧客、従業員、設備、取引先、資金、ブランドなど、すでに多くの経営資源があります。

そのため、

個別の事業アイデア → 会社の戦略

ではなく、

会社の将来像 → 新規事業の位置づけ → 個別の事業テーマ

という順番で考える方が適する場合があります。

例えば、
「よく分からないが、とりあえずアイデアコンテストを始める」という進め方には注意が必要です。
アイデアは集まっても、「何を基準に採用するのか」が決まっていなければ、選べないからです。

まず必要なのは、

既存事業の延長だけでは埋められない、将来ビジョンとのギャップは何か

という問いです。そして、

なぜ今、自社が、新規事業に取り組むのか

まで掘り下げます。

【コラム】
なお、アイデアコンテスト自体を否定するつもりはありません。ただし、会社として「どの方向のアイデアを求めているのか」「トップの考える将来のビジョン」などを示さずに募集すると、単発の思いつきが大量に集まり、その後の評価や取捨選択が難しくなると考えています。

4.新規事業の全体方針を7つの視点で整理する

個別の新規事業テーマを考える前に、会社としての新規事業開発の方針を整理しておくと、後の判断がしやすくなります。考え方の一例として、次の7つがあります。

1.全社ビジョンを明確にする

将来、会社をどのような状態にしたいのかを考えます。

2.なぜ今、新規事業なのかを明確にする

既存事業だけでは埋められない将来像とのギャップを確認します。

3.新規事業に使える投資原資を確保する

既存事業で短期的な問題が起きるたびに、新規事業の予算が削られる状態では、長期的な挑戦は難しくなります。

4.どのテーマ・領域を狙うのかを整理する

何でも対象にするのではなく、会社として検討する範囲を定めます。

5.いつまでに、どの程度の成果を求めるのかを決める

新規事業は時間がかかります。
短期売上だけで評価するのか、数年後の事業化を目指すのかによって管理方法も変わります。

6.誰が、どのように進めるのかを決める

専任、兼任、プロジェクト方式、外部企業との共同開発など、体制を考えます。

7.何に、どこまで投資するのかを考える

一つの事業案だけに賭けるのではなく、複数テーマをどのように組み合わせるかというポートフォリオの考え方も必要です。

5.新規事業は「自社が作れるもの」だけを出発点にしない

新製品開発でよくあるのが、

「当社にはこの技術がある」

「この技術を使って何か新しい商品を作れないか?」

という考え方です。

もちろん、自社の技術やノウハウは重要ですし、これを活用して成功した新製品・新規事業が成功した事例は多々あります。
しかし、それだけを出発点にすると、「作れるもの(できること)」を考えること自体が目的になってしまうことがあります。

重要なのは、

「何を作れるか」ではなく、「誰のどんな困りごとを解決するのか」

という視点です。

まず顧客や市場に目を向け、

  • どのような変化が起きているのか
  • 誰が困っているのか
  • どのような課題があるのか
  • 現在はどのように対応しているのか
  • 既存の方法では何が足りないのか

を考えます。

その上で、自社の技術やノウハウをどう活用できるのかを考えていきます。

6.顧客の課題を深く掘り下げる

顧客に、

「何が欲しいですか?」

と聞くだけでは、本当のニーズが見えてこないことがあります。

顧客自身も、まだ言葉になっていない不満や課題を明確に認識しているとは限らないからです。

そこで、

  • なぜ、それが必要なのか
  • 具体的に何に困っているのか
  • その問題はいつ起きるのか
  • 誰が困っているのか
  • 現在はどのように対応しているのか
  • 今の方法では何が足りないのか
  • その問題が解決すると何が変わるのか

といった問いを重ねます。

単に意見をたくさん集めるのではなく、一つの意見を深掘りして、具体的な課題まで掘り下げることが重要です。

つまり、

「何が欲しいのか」を聞くのではなく、
「なぜ、それを欲しいと思ったのか」を掘り下げる。

ということです。

新規事業の検討は、会議の時間だけで進むものではありません。
日常の営業活動や顧客との会話、ニュース、展示会、競合調査などから、「これは使えるかもしれない」という気づきが出てきます。

そのため、

  • 顧客の声
  • 市場情報
  • 競合情報
  • 新しい技術
  • 仮説
  • 思いついたアイデア

をオンラインでいつでも共有できる仕組みを作っておくと、新規事業開発と相性がよいでしょう。
重要なのは、高価なシステムを入れることではなく、気づいたときに記録し、あとから検索・共有できることです。

7.PEST分析で「世の中の変化」を見る

顧客の課題を考えるとき、目の前の顧客だけを見るのではなく、社会全体の変化も確認します。
そこで使えるのがPEST分析です。

PEST分析は、一度実施して終わりではありません。事業の検討が進むにつれて、新たに見えてくる情報があります。
そのため、

「最初に分析して終わり」ではなく、検討の進捗に応じて見直す

ことが重要です。

一方で、PESTは4つの欄を完全に埋めることより、自社の事業に影響しそうな変化を3つ程度まで絞ることも必要だと考えます。全てを完全に埋めきるのは、予想以上に時間を要する場合が多いです。

【コラム】
複数のフレームワークを連携させて使う場合は、最初に全体を俯瞰して、それぞれの位置づけを把握・理解することを強く推奨します。これをしないと、「よくわからないままフレームワークを埋める作業になってしまう」「フレームワークを埋めることが目的化してしまう」など数多くの弊害が発生します。

8. SWOT分析は「強み探し」で終わらせない

外部環境を確認したら、

  • 機会
  • 脅威

を整理し、自社について、

  • 強み
  • 弱み

を整理します。

ここでありがちな失敗が、

「当社の強みは○○技術です」

で終わってしまうことです。

強みは目的ではありません。

強みは、顧客の課題を解決するための「手段」です。
また、本当の強みは、必ずしも社内で「強み」と認識している技術そのものとは限りません。

例えば、

  • 長年の経験
  • 独自のノウハウ
  • 顧客との関係
  • 業界知識
  • データ
  • ネットワーク
  • 独自の業務プロセス
  • 現場で培った暗黙知

なども、競争力の源泉になる可能性があります。

したがって、

「自社には何があるか」

だけではなく、

「その資源を使うことで、競合にはできない何ができるのか」

まで掘り下げます。

SWOT分析では、


SWOT分析では、
内部環境を「強み(プラス要因)」と「弱み(マイナス要因)」の2つに分類
外部環境を「機会(プラス要因)」と「脅威(マイナス要因)」の2つに分類

2×2の4象限を作成し、戦略の方向性を考えます。(ここで内部環境分析と外部環境分析が繋がります。)

例えば、
「強み×機会」の組み合わせで【積極的に攻める戦略】
「弱み×脅威」の組み合わせで、【弱みを把理解し、脅威の悪影響を回避する】
等が考えられます。

9. 3C分析で「顧客・競合・自社」を考える

3C分析では、

  • Customer(顧客・市場)
  • Competitor(競合)
  • Company(自社)

の3つから考えます。

ここで重要なのは、

顧客 → 競合 → 自社

という順番です。

「自社が何を作れるか」を最初に考えるのではなく、

市場にはどんな機会があるのか

顧客は何に困っているのか

競合はどこまで対応しているのか

その中で、自社は何ができるのか

さらに、何に挑戦すべきなのか

という順番で考えます。顧客のニーズ(痛み)をどれだけ汲み取れるかが非常に重要です。

10.事業構想には複数の入り口がある

新規事業は、必ず同じところから始まるわけではありません。
例えば、

強み起点型

自社がすでに持っている技術・ノウハウ・顧客基盤から新しい用途を探す。

理想像起点型

将来実現したい会社や社会の姿から逆算する。

市場課題起点型

現在の顧客・市場の困りごとから考える。

社会変化起点型

人口減少、人手不足、環境問題、技術革新など、大きな環境変化から事業機会を探す。

どれが優れているというものではありません。
また、一つの入り口だけで考える必要もありません。

例えば、
社会課題 → 顧客課題 → 自社の強み
とつながる場合もあれば、

自社技術 → 新しい用途 → 新しい顧客課題
という場合もあります。

中小企業では、全く未知の技術・未知の市場を同時に狙うより、まず自社の強みか既存顧客のどちらかを足場にした方が進めやすいと考えています。

11. 狙う領域を絞る(STP・ポジショニングマップ)

3C分析まで行うと、

  • どのような顧客がいるのか
  • 競合はどのような価値を提供しているのか
  • 自社にはどのような強みがあるのか

が、ある程度見えてきます。

ただし、新規事業では、市場全体を相手にしようとすると焦点がぼやけやすくなります。

そこで次に考えるのが、

「誰を狙い、どのような立ち位置で選ばれるのか」

ということです。

その整理に使いやすいのが、STPとポジショニングマップです。

STPで「誰に届けるか」を整理する

STPは、

  • Segmentation(市場を分ける)
  • Targeting(狙う顧客を決める)
  • Positioning(どのような価値で選ばれるかを決める)

という考え方です。

まず、市場を一つの大きな塊として見るのではなく、

  • 企業規模
  • 業種
  • 地域
  • 利用場面
  • 課題の深さ
  • 価格感度
  • 導入目的

などで分けて考えます。

そのうえで、

「自社が最も価値を提供しやすいのは、どの顧客層か」

を絞ります。

例えば、

「中小製造業向けのサービス」

だけでは、まだ範囲が広すぎます。

そこから、

「人手不足が深刻で、既存設備を活かしながら省人化を進めたい従業員50人以下の製造業」

のように具体化すると、必要な機能や価格、営業方法も考えやすくなります。

ポジショニングマップで「競合との違い」を見る

ターゲットを決めたら、次に、

その顧客から見て、自社の商品・サービスはどこに位置づくのか

を考えます。

その整理に使えるのがポジショニングマップです。

例えば、

  • 価格が高い/低い
  • 汎用的/専門特化
  • 導入しやすい/高機能
  • 標準型/個別対応型

など、顧客が実際に比較しそうな2つの軸を使って、競合と自社を配置します。

ここで重要なのは、きれいな図を作ることではありません。

見るべきなのは、

  • 競合が集中している領域
  • 競合が少ない領域
  • 顧客にとって本当に意味のある違いがあるか
  • 自社の強みを活かせる位置か

です。

空いているポジションがあるからといって、そこに市場があるとは限りません。

競合がいないのは、

「誰も気づいていない市場」

ではなく、

「顧客が価値を感じない市場」

だからかもしれません。

そのため、ポジショニングマップは、顧客課題や競合調査とセットで使う必要があります。

狙う領域は「市場の魅力」と「自社らしさ」の両方で決める

新規事業では、

市場が大きいか

だけで対象を決めるのは危険です。

一方で、

自社が得意だから

という理由だけでも十分ではありません。

考えたいのは、

顧客にとって価値があり、競合と違いを出せて、自社の強みを活かせる領域か

ということです。

この段階まで整理すると、

「どんな市場に参入するか」

という抽象的な話から、

「誰の、どんな課題を、どのような違いで解決するのか」

という具体的な新規事業テーマに近づいてきます。

【コラム】
中小企業の新規事業では、最初から広い市場を狙うより、既存の顧客接点や自社の強みを活かしやすい顧客層から始める方が、検証しやすいと考えています。

12. 「やりたいこと」から「やるべきこと」へ

新規事業では、

「自分がやりたい(できる)」

という思いも大切です。
しかし、それだけで事業として成立するとは限りません。
考えたいのは、

「やりたいこと」×「顧客が必要としていること」×「自社が実現できること」

の重なりです。

さらに、

「今、この会社が取り組むべき理由は何か?」

まで考えます。
ここで初めて、新規事業の「テーマ」が見えてきます。

13.ターゲット・シーン・ベネフィットを具体化する

新規事業のアイデアが出てきたら、次に重要なのが、ターゲット・シーン・ベネフィットの3つです。

【ターゲット】誰が使うのか?
【シーン】いつ、どこで、どのように使うのか?
【ベネフィット】使うことで、顧客にどんな価値が生まれるのか?

例えば、

「中小企業向けの新しいサービス」

というだけでは、まだ具体性がありません。

そうではなく、

「誰が、どのような状況で、何に困っていて、そのサービスによって何が良くなるのか」

まで具体化します。
この3点が明確になると、製品・サービスの内容だけでなく、販売方法や価格設定なども考えやすくなります。
ここで重要になるのが、「誰の課題を解決するのか。」の視点になります。

➀自分自身が抱えている課題の場合

【メリット】
もっとも共感・理解しやすく、深い洞察が可能となる。

【デメリット】
課題による痛みを誇張してしまい、客観的な視点が不足する。


➁身近な人が抱えている課題

【メリット】
共感しやすく、自分事として考えられる。

【デメリット】
視野が狭くなるケースがある。


➂第三者が抱えている課題

【メリット】
客観的な視点を持てる。
バイアスがかかりづらい。

【デメリット】
自分事として捉えられないため、分析が表面的になりがち。

【コラム】
例えば、「中小企業向け」「高齢者向け」だけではまだ広すぎます。顧客の課題をどう解決するかについて、担当者に「腹落ち感」がでるまで具体化することは最低限必要です。

14.アイデアは「広げてから絞る」―635法・KJ法

635法―短時間でアイデアを増やす

635法は、複数人が紙などにアイデアを書き、順番に回しながら他の人の案に発想を加えていく方法です。
代表的な形では、

6人 × 3アイデア × 5分

で進めます。
ただし、実務では必ず6人集めなければ使えないわけではありません。
人数や時間は、自社の状況に合わせて調整して構いません。635法の価値は、「6・3・5」という数字を守ることより、

他人のアイデアを刺激として、さらに発想を広げる

ところにあります。

中小企業では6人のメンバーを確保できない場合も多いため、3~4人で回す、オンライン共有シートを使って数日かけて行うなど、方法そのものを自社向けに崩してよいと考えています。

KJ法―増えた情報を整理する

635法などでアイデアを増やした後、そのまま一覧にして終わると、次の判断につながりません。
KJ法では、

一つの意見・アイデアを一枚にする

似たものを近くに集める

まとまりに名前を付ける

まとまり同士の関係を見る

という形で整理します。
これによって、「50個のアイデア」が、「5つの新規事業テーマ候補」のような形に変わっていきます。

15.製品・サービスのコンセプトを具体化する

アイデアを絞ったら、製品・サービスをさらに具体化します。

といった項目から整理できます。

この段階では、「申請書にどう書くか」を考えすぎないことも重要です。

まず、

「この事業は、一体何を実現するものなのか?」

を明確にします。

「良い商品を作れば売れる」ではなく、「どう届け、どう収益化するか」まで考える

という現在の軸を残します。

16.「モノ」ではなく「コト」まで考える

新製品開発では、製品そのものに意識が集中しがちです。

しかし、

作ったモノを通じて、顧客や社会に何を実現したいのか

まで考えることが重要です。
例えば、

「新しい機械を販売する」

だけではなく、

「その機械によって、これまで人手に頼っていた工程を変え、少人数でも生産できる体制をつくる」

というところまで考える。
そうすると、新規事業が単なる「新商品」ではなく、経営戦略としての新規事業になっていきます。

17.技術課題と事業化課題を分けて考える

新規事業では、

「技術的に作れるか?」

だけを考えてしまいがちです。
しかし、製品を作れることと、事業として成立することは別です。

例えば、

技術的課題

どうやって実現するのか?

事業化課題

誰に、どのような価値として提供し、どう事業として成立させるのか?

戦略的課題

この新規事業によって、自社をどのような会社にしていくのか?

という3つに分けて考えると整理しやすくなります。

18.4P分析で「売れる仕組み」まで確認する

テーマとコンセプトが固まったら、

  • Product:何を提供するか
  • Price:いくらで提供するか
  • Place:どのように届けるか
  • Promotion:どのように知ってもらうか

を検討します。製品の付加価値、価格、流通、販促は相互に影響します。

そのため、

「良い商品を作れば売れる」

というだけではなく、

「誰に、どのような価値を、どのような方法で届け、どのように収益化するのか」

まで考える必要があります。

19.不確実性に応じて挑戦する領域を決める

新規事業にはリスクがあります。

しかし、

「新規事業だから、最も新しいことに挑戦しなければならない」

というわけではありません。

アンゾフのマトリクスで考えると、

  • 既存市場 × 既存製品
  • 既存市場 × 新製品
  • 新市場 × 既存製品
  • 新市場 × 新製品

という4つに整理できます。

一般的には、既存市場・既存製品から離れるほど、不確実性は大きくなります。

中小企業であれば、

  • 既存顧客に新しい商品・サービスを提供する
  • 既存技術を新しい顧客へ展開する

という、既存と新規を組み合わせた領域から始める方法もあります。

既存事業の収益基盤やノウハウを使えるため、まったく未知の市場×未知の製品へ進むより、リスクを抑えやすくなります。

【コラム】
私は、中小企業の最初の新規事業では「新市場×新製品」を積極的には勧めません。技術力や製品力があっても、それを新規事業として昇華させるためのノウハウが不足しているためです。

顧客理解が深い場合は「既存市場×新製品」を勧めますし、技術的優位性が高い場合は「新市場×既存技術」を勧めます。まずは、プロセスを学ぶ必要があると考えます。

20.自前で進めるか、外部と組むか

すべてを社内だけで開発する方法もあれば、社外の技術や人材を活用する方法もあります。

クローズドイノベーション(自社だけでやる)

主として自社の人材・技術・設備を使って開発する方法です。

メリットは、

  • 情報管理がしやすい
  • 意思決定が比較的しやすい
  • 自社にノウハウを残しやすい

ことなどが挙げられます。

一方で、自社に足りない技術や人材まで一から整えると、時間や費用がかかります。

オープンイノベーション(他者と連携してやる)

他企業、大学、研究機関、スタートアップ、専門家など、社外の知識や資源を取り入れながら開発する方法です。

期待できるのは、

・開発のスピードアップ
・事業のスケールアップ
・自前開発コストの削減
・自社の強みの再認識

などです。

ただし、

・営業秘密として守る部分を明確にする
・外部連携そのものを目的にしない
・コミュニケーションコストを見込む
・「なぜこの相手と組むのか」を明確にする

ことが必要です。

21.早い段階で試し、修正する

最初から完成品を作る必要はありません。簡単なモックアップや試作品でも構いません。(有名な例では、コードレス掃除機のダイソンなどが挙げられます。)

例えば、

➀ モックアップ
➁ 簡単な試作品
➂ サービスの一部提供
➃ 手作業による仮運用
➄ 顧客ヒアリング
⑥ 小規模なテスト販売

など、実際に形にしてみることで、

  • 本当に使いやすいのか
  • 想定した使い方ができるのか
  • どこに問題があるのか
  • 顧客が本当に価値を感じるのか

など、机上では見えなかった課題が見えてくることがあります。
新製品開発は、最初に作った計画どおり一直線に進むものではありません。

考える → 試す → 確認する → 修正する

を繰り返すことが重要です。

22.経営革新計画や支援制度につなげる

ここまで検討しておけば、経営革新計画の申請書を書くときにも、いきなり様式の空欄を埋める必要がなくなります。

例えば、

という形で、事業のストーリーがつながってきます。

つまり、

申請書を書くために事業を考えるのではなく、事業を考えた結果として申請書に書く内容が見えてくる

という考え方です。

経営革新計画を作成すること自体を目的にするのではなく、新しい事業を実現するための経営計画として考えることが重要です。


ここまで検討した内容は、経営革新計画や補助金に展開できるよう、事業の骨子として一度整理しておくと使いやすくなります。

23.事業化できなかった経験も会社に残す

新規事業は、最終的には事業化を目指します。
しかし、一つの案が事業化に至らなかったとしても、そこまでの検討をすべて「失敗」として捨てる必要はありません。

例えば、

  • 顧客について分かったこと
  • 市場について調べた情報
  • 技術的に難しかった理由
  • 顧客が価値を感じなかった理由
  • 価格が合わなかった理由
  • 他社との連携で学んだこと

は、次の事業開発に使えます。

また、

  • 仮説を立てる
  • 顧客に聞く
  • 市場を調べる
  • アイデアを出す
  • 絞り込む
  • 試す
  • 振り返る

という経験そのものが、人材育成にもなります。

新規事業開発の成果を、「事業化できたか」だけで評価するのではなく、「次の新規事業を自分たちで考えられるようになったか」まで見ることも重要です。

24. 新規事業のテーマは「思いつき」から作らない

新商品・新サービスの開発をテーマとする場合の流れの例を改めて整理します。

① 外部環境を見る(PEST分析)

② 自社と市場の関係を見る(SWOT分析)

③ 顧客・競合・自社を掘り下げる(3C分析)

④ 狙う領域を絞る(STP・ポジショニングマップ)

 アイデアを拡散した後集約させる(635法・KJ法など)

⑦ ターゲット・シーン・ベネフィットを具体化し、 製品・サービスのコンセプトを固める

⑨ 4P・4C、事業性を確認する

 製品企画・事業計画にまとめる

⑪ 必要に応じて経営革新計画などの申請につなげる

ただし、重要なのは、フレームワークを使うことそのものではありません。

フレームワークは、あくまで「考えるための道具」です。
極端な話、ビジネス感度の高い方であれば、フレームワークを意識せずに新規事業を組み立てることも可能です。

一方で、フレームワークを使うメリットは、
➀ 漏れなく・ダブりなく分析できる
➁ 複数人で進める場合の情報共有の基盤として優秀なものが多い

ことなどが挙げられます。

いずれにせよ最終的に目指すのは、

自社が何を作りたいかではなく、顧客のどんな課題を、なぜ自社が、どのような方法で解決するのかを説明できる状態

です。

25.まとめ―このページの方法も「一例」です

ここまで、新規事業を考える一つの流れを説明しました。
ただし、繰り返しになりますが、

このページの順番どおりに進めれば成功する、という意味ではありません。

会社によって、

  • PESTから考えた方がよいケース
  • 顧客へのヒアリングを先にした方がよいケース
  • 自社技術から考えた方がよいケース
  • 先に簡単な試作品を作った方がよいケース

があります。

大切なのは、

フレームワークに事業を合わせるのではなく、事業を考えるためにフレームワークを使う

ことです。

そして最終的には、

誰のどんな課題を、なぜ自社が、どのような方法で解決し、それを事業としてどう成立させるのか

を、自分たちの言葉で説明できる状態を目指します。

26. 「自分たちで考えられる会社」へ

新規事業の支援では、外部の専門家が事業計画を作って終わりにするのではなく、企業自身が考え方を身につけることも重要です。

外部の専門家から新しいアイデアをもらうだけでは、次の新規事業を自社だけで考えられるとは限りません。

一方で、

  • 市場を見る
  • 顧客の課題を探す
  • 自社の強みを見直す
  • アイデアを広げる
  • テーマを絞る
  • コンセプトを作る
  • 事業性を検証する

というプロセスを経験すれば、次に新しい事業を考えるときにも、その経験を活かすことができます。

新規事業を一度成功させることだけでなく、新規事業を考え、検証し、実行する力を社内に蓄積すること。

それも、新製品開発・新規事業支援における重要な目的の一つです。

【コラム】
私が頻繁に見た失敗事例としては、外部専門家への依存度が高くなった結果、
➀ 専門家の得意領域だけは深く掘り下げられたが、他の掘り下げが不足し、事業化に至らなかった。
➁ 自社内にノウハウを蓄積できず、後続のプロジェクトが続かなかった。
などという事例があります。
外部専門家は、中小企業診断士、税理士、デザイナーなど多種多様ですが、それぞれ得意分野が異なります。事業の核となる部分(製品コンセプト)は自社で持つべきです。

27. 代替・補完できるフレームワークの例

今回使用したフレームワークはあくまで一例で、世の中には代替・補完可能なフレームワークが多数あります。
また、フレームワーク自体が馴染まないケース・企業もあるかもしれません。

このページで紹介代替・補完候補何を考えるときに使うか
PESTSTEEP外部環境を広く見る
SWOTTOWS・VRIO戦略案・経営資源を深掘り
3C5Forces業界・競争構造を見る
STPJTBD顧客が本当に達成したいことを見る
635法SCAMPER・ブレインライティングアイデアを広げる
KJ法アフィニティ・ダイアグラム情報・アイデアを整理
TSBValue Proposition Canvas顧客課題と提供価値を詳しく整理
4P4C顧客側・サービス側から検討
事業全体Business Model Canvas / Lean Canvas事業モデルを一枚で整理

どれを使うかより、今何を考えたいのかを先に決める

ことが重要と考えます。

28. 新規事業について、こんなお悩みはありませんか?

  • 新しい商品・サービスを開発したいが、何から考えればよいかわからない
  • 自社の技術や強みを新しい事業につなげたい
  • 顧客から要望はあるが、新商品として成立するのかわからない
  • アイデアはいくつかあるが、どれを選べばよいかわからない
  • 新規事業のターゲットや提供価値を整理したい
  • 経営革新計画を検討しているが、申請書を書く前の事業整理から相談したい
  • 自社だけでは思考が行き詰まるので、第三者と壁打ちをしたい

こうした場合には、申請書の作成だけを考えるのではなく、その前段階にある「何を事業にするのか」「なぜその事業に取り組むのか」を誰かと一緒に整理することが重要です。

新規事業のテーマが明確になれば、経営革新計画などの計画策定も、その事業を実現するための一つの手段として位置づけることができます。

「何を書けばいいのかわからない」から始めるのではなく、「何を実現したいのか」を明確にする。

そこから、新規事業の計画は始まります。

「新規事業の検討内容を『事業の骨子』として整理する」

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