新規事業(新製品)について、多くの方から寄せられる質問をまとめました。実務の経験から、実践的な情報をお伝えします。
【目次】
01. 新規事業の考え方・始め方について
02. 顧客ニーズ・市場の見方について
03. フレームワーク・分析について
04. アイデア創出・絞り込みについて
05. 商品・サービスの具体化について
06. リスク・投資判断について
07. 組織・担当者について
08. 補助金・経営革新計画との関係について
09. 失敗・学び・次の挑戦について
01. 新規事業の考え方・始め方について
- 新規事業は、まず何から考えればよいですか?
-
いきなり商品やサービスの内容を考えるより、まず「誰のどんな課題を解決するのか」から考える方が整理しやすくなります。
自社に技術やノウハウがあると、
「この技術を使って何かできないか」
と考えたくなります。もちろん技術を起点に考えること自体が悪いわけではありません。ただ、それだけでは既存事業の延長にとどまったり、顧客が必要としていないものを作ったりする可能性があります。
まず顧客や市場を見て、
- 誰が困っているのか
- なぜ困っているのか
- 今はどう対処しているのか
- 今の方法では何が足りないのか
を整理し、その後で自社の強みをどう使えるかを考えるのが一つの進め方です。
- 自社の技術や強みから新規事業を考えてはいけないのでしょうか?
-
いいえ。自社の技術や強みは、新規事業を考えるうえで大切な材料です。
問題になるのは、
「この技術を使うこと」自体が目的になってしまうこと
です。
例えば「高い技術力がある」と整理するだけでは、新規事業にはつながりません。
その技術によって、
- 顧客のどんな課題を解決できるのか
- 競合より何ができるのか
- どんな市場で価値が出るのか
まで考える必要があります。
技術やノウハウは目的ではなく、顧客の課題を解決するための手段として捉えると、新しい事業につなげやすくなります。
- 新規事業では、自社にない技術はすべて社内で開発すべきでしょうか?
-
その必要はありません。
自社だけで企画・開発を進める方法もあれば、他企業、大学、研究機関、専門家などと連携して進める方法もあります。
大切なのは、まず、
「自社には何があり、何が足りないのか」
を明確にすることです。
外部と組むことで、開発スピードを上げたり、自社にない技術を活用したりできる場合があります。
一方で、外部に依存しすぎると、自社にノウハウが残らないこともあります。
何を外部に任せ、何を自社に残すのかまで考えて連携方法を決めることが大切です。
- 結局、新規事業で一番大切なのは何ですか?
-
一つだけ挙げるのは難しいですが、必要な検討を飛ばさず、一つずつ確認しながら進めることが大切です。
新規事業では最初から正解が分かるわけではありません。
そのため、
顧客を知る→市場を見る→自社の強みを確認する→狙う顧客を絞る→複数の案を考える→小さく試す→結果を見て修正する
というように、仮説と検証を繰り返します。
新規事業のリスクを完全になくすことはできません。
しかし、必要な検討を省略しなければ、「始めてから初めて重大な問題に気づく」という可能性を減らすことはできます。
02. 顧客ニーズ・市場の見方について
- 顧客に「何が欲しいですか」と聞けば、ニーズは分かりますか?
-
それだけでは分からないことがあります。
顧客自身も、自分が抱えている課題を完全には言葉にできていないことがあるためです。
「何が欲しいですか」と聞くだけではなく、- なぜ必要なのか
- 何に困っているのか
- その問題はいつ起きるのか
- 今はどう対応しているのか
- 今の方法の何が不満なのか
- 問題が解決すると何が変わるのか
まで掘り下げていきます。
新しい製品そのものを聞くというより、顧客が現在抱えている不便や制約を理解することが出発点になります。 - 少数の顧客から「欲しい」と言われたら、事業化してよいでしょうか?
-
すぐに市場全体のニーズがあると判断するのは少し危険です。
親しい取引先であれば好意的な反応をしてくれることもありますし、一時的に同じ問題が発生しているだけかもしれません。
そのため、
- 他の顧客にも同じ課題があるのか
- 今後もその課題が続くのか
- 業界全体でどのような変化が起きているのか
- お金を払ってでも解決したい課題なのか
まで確認します。
顧客の声と、業界・社会・技術などの外部環境を合わせて見ることが大切です。
- 新規事業のターゲットは広く取った方が売上を伸ばせるのではないですか?
-
立ち上げ段階では、必ずしもそうとは限りません。
対象を広げすぎると、
- 顧客ごとに要望が違う
- 商品やサービスの特徴がぼやける
- 営業方法が定まらない
- 対応に人手がかかる
といった問題が起こりやすくなります。
最初は、「特に困っている顧客は誰か」を絞り、その顧客にとって価値のある商品やサービスを作る方が検証しやすくなります。一定の成果が確認できてから、対象顧客を広げていく方法もあります。
また、大きな市場は大企業が得意とする分野でもあり、直接競合すると勝つのが難しくなります。 - 競合がいない市場を見つければ、新規事業は成功しやすいですか?
-
競合がいないこと自体は、必ずしも良いことではありません。
競合がいない理由が、
「まだ誰も気づいていないから」なのか、
「そもそも顧客がお金を払うほど困っていないから」
なのかを確認する必要があります。
ポジショニングマップなどで競合の少ない場所を見つけても、それだけで魅力的な市場とは判断できません。
顧客課題、市場規模、自社の強み、収益性まで合わせて確認することが大切です。
03. フレームワーク・分析について
- PEST、SWOT、3Cなどは全部やらなければいけませんか?
-
必ずしも全部を使う必要はありません。
フレームワークは、答えを出してくれるものではなく、考える視点の抜け漏れを減らすための道具です。
例えば、
- 外部環境の変化を整理したい → PEST分析
- 自社の強みと市場機会をつなげたい → SWOT分析
- 顧客・競合・自社を比較したい → 3C分析
というように、考えたい内容に応じて使います。
フレームワークを埋めること自体が目的になってしまうと、本来の新規事業の検討から離れてしまいます。
- SWOT分析では「強み」をたくさん挙げればよいですか?
-
取捨選択を前提に数を増やすことも重要ですが、重要度や他社との差別化につながっているか、顧客課題の解決に繋げられるかなど、その強みが競争上どのような意味を持つのかを考えることが大切です。
例えば、「技術力が高い」「経験が豊富」
だけでは、新規事業とのつながりが分かりません。
そこから、
「この技術があるから競合より短期間で対応できる」
「この顧客基盤があるから試験導入先を確保しやすい」というところまで具体化すると、新規事業に使える強みになります。
- STPやポジショニングマップは何のために使うのでしょうか?
-
「誰を狙い、どのような違いで選ばれるのか」
を整理するために使います。
STPでは、市場をいくつかに分け、その中から狙う顧客を決めます。
その後、ポジショニングマップなどを使い、競合と比べて自社の商品・サービスをどこに位置づけるか考えます。ただし、競合が少ない場所を探すこと自体が目的ではありません。
その位置に顧客ニーズがあり、自社の強みを活かせるかまで確認する必要があります。 - フレームワークを使えば、新規事業の正解が見つかりますか?
-
見つかるとは限りません。
フレームワークは、あくまで考え方を整理するための道具です。
同じSWOT分析を行っても、会社によって出てくる答えは違います。
また、新規事業の性質によっては、使わなくてもよいフレームワークもあります。大切なのは、
「どのフレームワークを使うか」より、「今、何を考える必要があるのか」
を先に決めることです。
04. アイデア創出・絞り込みについて
- 良いアイデアを一つ思いついたら、その案を深掘りすればよいですか?
-
最初から一つの案に決めるより、一度選択肢を広げた方がよい場合があります。
最初に思いついた案が、必ずしも最も良いとは限りません。複数の案を出して、
- 顧客課題との適合
- 自社の強み
- 競合との差
- 収益性
- 実現可能性
などを比較することで、別の案の方が適していることが分かる場合があります。
新規事業では、
まず広げ、その後で絞る
という順番を意識すると考えやすくなります。
- 新規事業のアイデアは、多ければ多いほどよいのでしょうか?
-
数を出すこと自体が目的ではありません。
アイデアを増やすのは、最初に思いついた一案だけで判断しないためです。その後、
- 顧客に必要とされるか
- 自社の強みを使えるか
- 競合との差があるか
- 収益化できるか
- 実行可能か
などの基準で絞り込みます。
多産多死といっても、無計画に大量の案を作るという意味ではありません。
試した結果を次のアイデアに生かし、少しずつ案の質を高めていくことが大切です。 - 635法は、必ず6人で行わなければいけませんか?
-
必ずしも6人で行う必要はありません。
635法の代表的な形は、
6人 × 3つのアイデア × 5分
ですが、大切なのは数字そのものではありません。
他の人が書いたアイデアを見て、
「この案なら、こういう使い方もできる」
「この考えと組み合わせられそうだ」
と発想を広げるところに意味があります。
中小企業で6人を集めるのが難しい場合は、3~4人で行ったり、オンラインの共有シートを使ったりする方法も考えられます。
- KJ法は、どの段階で使うと効果的ですか?
-
アイデアや顧客の声が増え、全体が見えにくくなってきた段階で使いやすい方法です。
KJ法では、一つの意見やアイデアを一枚のカードや付箋に書き、
似たものを集める → まとまりに名前を付ける → グループ同士の関係を見る
という形で整理します。
例えば50個のアイデアが出た場合でも、整理していくと「5つの事業テーマ候補」のような形にまとめられることがあります。
アイデアを出すためというより、増えた情報を構造化するための方法として使うと分かりやすいでしょう。
05. 商品・サービスの具体化について
- 新製品は完成してから顧客に見せるべきですか?
-
必ずしも完成させる必要はありません。
むしろ、新規事業では早い段階で顧客の反応を確認した方が、大きな手戻りを防ぎやすくなります。製品であれば、
- 簡単な試作品
- モックアップ
- 一部機能だけの試作
サービスであれば、
- 一部の顧客だけへの試験提供
- 手作業による仮運用
- サービス内容の説明資料
などでも確認できます。
最初から完成品を作るのではなく、
考える → 試す → 確認する → 修正する
を繰り返します。
- 試験導入では何を確認すればよいですか?
-
「顧客が喜んでくれたか」だけでは十分ではありません。
例えば、
- 本当に課題が解決したか
- 継続して使いたいと思うか
- 価格は妥当か
- どの機能に価値を感じたか
- 提供する側の負担は想定どおりか
- 想定外の作業が発生していないか
- 採算が取れるか
まで確認します。
特に注意したいのは、
売れることと、利益が出ることは別
という点です。
顧客から好評でも、提供するための人件費や作業時間が大きすぎれば、事業として継続できない場合があります。
- 技術的に作れることが確認できれば、事業化してよいですか?
-
技術的に作れることと、事業として成立することは別です。
新規事業では、
技術的課題
どうやって実現するのか。事業化課題
誰に、どのような価値として提供し、どう収益を得るのか。戦略的課題
この事業によって、自社をどのような会社にしていくのか。という3つを分けて考えると整理しやすくなります。
良い製品ができても、販売方法や価格、対象顧客が定まっていなければ、事業としては成立しません。
06. リスク・投資判断について
- 新規事業では、最初から全く新しい市場を狙った方がよいですか?
-
必ずしもそうではありません。
アンゾフのマトリクスで考えると、
- 既存市場 × 既存製品
- 既存市場 × 新製品
- 新市場 × 既存製品
- 新市場 × 新製品
の順に、不確実性が高くなっていきます。
中小企業が新規事業を始める場合、
- 既存顧客に新しい商品を提供する
- 既存技術を新しい顧客層へ展開する
といった、既存と新規を組み合わせた領域から始める選択肢もあります。
最初から「新市場×新製品」の最も不確実性が高い領域を狙う必要はありません。
- 新規事業では、撤退基準も最初に決めておいた方がよいですか?
-
ある程度は決めておいた方がよいでしょう。
新規事業に時間やお金を使うほど、「ここまでやったのだから、もう少し続けたい」
という気持ちが強くなります。
そのため、
- いつまで試すのか
- 何社で検証するのか
- どの程度の反応があれば継続するのか
- どの程度の赤字まで許容するのか
- どの条件なら方向転換するのか
といった目安を事前に考えておくと、感情だけで継続・撤退を判断しにくくなります。
ただし、短期的な収益だけでなく、新規事業開発を進めることで、人材育成やノウハウの蓄積が進むことも考えに入れても良いと思います。
- 規事業を始める前に、法務や許認可まで確認する必要がありますか?
-
必要です。(経営革新計画の申請場面でも非常に頻繁に発生していました。)
事業内容が固まってから、
「許認可が必要だった」
「予定していた契約方法では実施できなかった」
となると、大きな手戻りになる場合があります。
事業によって異なりますが、
- 許認可や資格
- 知的財産
- 契約
- 個人情報
- 労働関係
- 業界特有の規制
などは、早い段階で確認しておく方が安全です。
分からない分野については、必要に応じて専門家へ確認してください。 - 新規事業では、売上目標を先に決めた方がよいですか?
-
目標を持つことは必要ですが、数字だけを先に置くのはおすすめできません。
例えば、
「3年後に売上1億円」
と決めても、
- 何社に販売するのか
- 1社あたりの単価はいくらか
- 何人で対応するのか
- 営業体制をどうするのか
- 設備投資はいくら必要か
がつながっていなければ、実現可能な計画とは言えません。
売上目標と、それを実現するための人員・設備・顧客数・資金を一緒に考えることが大切です。
07. 組織・担当者について
- 新規事業担当者は専任にしなければいけませんか?
-
中小企業では、完全な専任担当者を置くことが難しい場合もあります。
ただし、
「通常業務が終わって時間が余ったら新規事業をやる」
という状態では、既存業務が優先され、新規事業がほとんど進まなくなることがあります。
兼任であっても、
- 新規事業に使う時間
- 担当する範囲
- 誰が意思決定するのか
- どの程度の予算を使えるのか
を決めておくことが大切です。
少なくとも、新規事業だけに集中できる時間を組織として確保した方が進めやすくなります。
- 新規事業担当者の失敗は、評価を下げるべきでしょうか?
-
単純な減点方式は、新規事業とはあまり相性がよくありません。
新規事業では、十分に考えて試しても仮説が外れることがあります。
そのため、
- どのような仮説を立てたか
- どのように検証したか
- 何が分かったか
- 損失を必要以上に拡大させなかったか
- 次の検討に何を残したか
まで見る必要があります。
ただし、
「新規事業だから失敗しても何でもよい」
ということではありません。
十分な検討と検証を行った結果の失敗と、本来行うべき確認を省略したために起きた失敗は、分けて考える必要があります。
- 新規事業は経営者だけで考えた方が早いでしょうか?
-
経営者が方向性を示すことは大切ですが、すべてを一人で考える必要はありません。
新規事業では、
- 顧客と接している営業担当
- 現場を知っている社員
- 技術を理解している社員
- 財務や管理を担当している社員
など、それぞれ異なる視点が役立ちます。
一方で、全員で自由に考えるだけでは方向が定まらないこともあります。
経営者が、
「なぜ新規事業をやるのか」「どの方向を目指すのか」
を示し、その中で現場の知識やアイデアを集める形が考えられます。
トップダウンで進めるべき内容と、ボトムアップで進めるべき内容は事前に整理しておくべきです。
08. 補助金・経営革新計画との関係について
- 補助金が使えそうなら、それに合わせて新規事業を考えてもよいですか?
-
原則として、順番は逆にした方がよいでしょう。
まず、
「自社は何を事業として実現したいのか」
を整理します。
そのうえで、
- 必要な設備
- 必要な人材
- 必要な資金
- 実施時期
などを確認し、条件に合う補助金や融資、経営革新計画などがあれば利用を検討します。
補助金を起点に事業を作ると、公募内容が変わったときに、事業そのものまで揺らいでしまいます。
補助金は事業の目的ではなく、事業を実現するための手段として考える方が自然です。一方で、補助金の多くは申請期間が定まっていますので、計画をゆがめない程度であれば、スケジュールを調整することもあるかと思います。
- 経営革新計画を作れば、新規事業の内容も固まりますか?
-
経営革新計画の申請書を埋めることで、考えが整理されることはあります。
ただし、
申請書を書くために事業を考える
という順番より、
事業をしっかり考えた結果として、申請書に書く内容が見えてくる
という順番の方が望ましいでしょう。
顧客課題、自社の強み、提供価値、販売方法、売上計画などが整理されていれば、経営革新計画の内容にもつなげやすくなります。
- 補助金・融資・経営革新計画は、どの段階で検討すればよいですか?
-
新規事業の骨子がある程度見えてきた段階が一つの目安です。
例えば、
- 誰に提供するのか
- 何を提供するのか
- どのように販売するのか
- どの程度の売上を目指すのか
- どんな設備や人材が必要なのか
- いくら資金が必要なのか
が見えてくると、どの支援制度が合うのかを判断しやすくなります。
最初から制度に事業を合わせるのではなく、事業の内容に合わせて制度を選ぶという順番を基本にします。
09. 失敗・学び・次の挑戦について



