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新モノ補助の新規性・市場・開始時期|【新事業進出枠】のグレーゾーン

2026年度の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(以下「新モノ補助」)の新事業進出枠では、
「新しい製品・サービスであること」と「新しい市場へ進出すること」の両方が求められます。
さらに、申請予定回の公募開始日以降に初めて取り組んでいる事業であることも、新規性の判断に関係します。

ここで迷いやすいのが、

「既存顧客向けでも大丈夫なのか」
「同じ業種の顧客では新市場にならないのか」
「社内で試作したら、もう開始したことになるのか」
「顧客に無償で試してもらったらどうなるのか」

といった境界部分です。
公式資料で明確になった部分もありますが、すべての行為について白黒の基準が示されているわけではありません。
本ページでは、公式資料で明確な部分と、現時点では判断しにくい部分を分けて整理します。

[新モノ補助の対象になる事業・ならない事業]
[新モノ補助の3つの申請枠の比較]

新事業進出枠では「2つの新規性」を確認する

新事業進出枠で最初に確認するのは、次の2点です。

確認するもの考え方
製品等の新規性自社にとって新しい製品・商品・サービスか
市場の新規性既存事業では対象としていなかったニーズ・属性を持つ顧客層か

製品・サービスについて求められるのは、必ずしも日本初・世界初という意味での新規性ではありません。
その企業にとって新しいことが基本です。
一方、市場については、単に販売地域を変えたり、従来顧客の一部へ別の商品を売ったりするだけでは足りません。
公式には、新たな市場を、既存事業では対象としていなかったニーズ・属性(法人/個人、業種、行動特性等)を持つ顧客層を対象とする市場としています。

なお、「革新的新製品・サービス枠」における「新規性」とは定義が異なります。 革新的新製品・サービス枠では、自社の技術力や強みを活かし、顧客に新たな価値を提供する製品・サービスであることに加え、同業の中小企業等に相当程度普及しているものではないこと(要は他社と差別化されていること)が必要になります。(この定義は、経営革新計画における新規性の定義とほぼ同じです。)

製品・サービスの新規性|何が「新しい」のか

応募申請ガイドでは、新事業進出枠の「製品等の新規性」に該当しない例として、次のような考え方が示されています。

既存製品の製造量・提供量を増やすだけでは、新規事業とはなりません。
過去に一度製造・提供していたものを再開する場合も、新しい製品等とは扱われません。

また、既存製品そのものは変わらず、製造方法だけを変更する場合や、性能を定量的に比較できる製品で従来品と有意な差がない場合も、非該当例として示されています。

したがって、

「設備を新しくした=新しい事業になった」という関係ではありません。

見るべきなのは、顧客へ提供する製品・商品・サービスそのものが、自社にとって新しいかどうかです。

「市場の新規性」は既存顧客かどうかだけでは決まらない

市場については、
【既存顧客だからNG】
【新規顧客だからOK】
と単純に分けることはできません。

公式の定義で見るべきは、顧客のニーズや属性です。

例えば、既存事業では、「工作機械や部品を購入したい」という需要に対応していた会社が、
新規事業では、「設備停止を予防し、既存設備を長期間使用したい」という別のニーズへ対応する場合を考えます。
この場合、同じ企業が顧客候補に含まれていても、対象とするニーズ・属性が既存事業とは異なることを説明できるかが論点になります。
逆に、既存顧客の一部が従来商品の代わりに新商品を買うだけであれば、市場が変わったとは説明しにくくなります。

応募申請ガイドでも、

「既存市場の一部だけを対象とする」
「単に商圏を変える」
「既存製品と新製品の需要が置き換わるだけ」

といったケースは、市場の新規性に該当しない例として示されています。

「市場の新規性」と「新市場性」は別の話

ここは非常に分かりにくいところです。
新事業進出枠には、「市場の新規性」と「新市場性」という似た言葉が出てきますが、同じ意味ではありません。

まず補助対象となるためには、「製品等の新規性 + 市場の新規性」の両方に該当する必要があります。
そのうえで審査では、「新市場性」または「高付加価値性」のいずれかを満たしているかが確認されます。

新市場性とは、その市場が世の中ですでに一般的か、それともまだ普及していない新しい分野かを見る考え方です。

ここでは「高精密」「小型」「高所得者向け」「無人」「特定地域向け」といった特徴でジャンルを細かく切るのではなく、より一般的なジャンル・分野で考えることが示されています。

したがって、
「自社にとって新しい顧客市場であること」と、「社会一般でもまだ普及していない市場であること」
は、別々に考える必要があります。

なお、新市場性が弱い場合でも、高付加価値性が評価される余地があります。公式資料では、新市場性または高付加価値性のいずれかを満たしているかを審査すると説明しています。

開始時期|公募開始前に販売・提供していると厳しい

新事業進出枠では、「申請予定回の公募開始日以降に初めて取り組んでいる事業」について、新規性を有するものとみなすとされています。

応募申請ガイドでは、さらに具体的に、
「公募開始日時点ですでに販売・提供や売上が発生している場合」を、新規性に該当しない例として示しています。例えば、公募開始前からECで新商品を販売し、すでに売上が発生しているケースです。

したがって、少なくとも、「販売済み・提供済み・売上発生済み」という状態まで進んでいる場合は、新事業進出枠では大きな問題になります。

では、試作・PoC(本格導入前の実証・検証)・デモはどこまでできるのか

難しいのは、その前段階です。

現時点の公開資料では、

「社内試作をしたら開始」
「顧客に見せたら開始」
「無償PoCをしたら開始」

というように、一つ一つの行為について統一的な判定基準までは示されていません。
そのため、ここからは公式から明文されたものではなく、公募開始前に販売・提供済みであれば非該当という基準から、やや保守的に基準を設定したものになります。(判断が難しい場合は、直接事務局に問い合わせることをお勧めします。)

公募開始前の行為現時点での整理注意点
アイデア検討・社内会議比較的低リスク外部への提供ではない
市場調査・統計調査比較的低リスク事業計画作成にも必要
顧客へのニーズヒアリング比較的低リスク~要注意サービス提供まで進めない
社内試作・社内検証グレー個別の線引きは明示されていない
試作品を顧客に見せるグレー単なる意見聴取か、実利用かで意味が変わる
顧客デモグレー実際のサービス提供に近づくほど注意
無償PoC・無料利用注意度が高い「提供」に当たる可能性を否定できない
広告・LP公開グレー公開だけで開始になるか明確な線引きなし
予約・受注注意度が高い商用化開始と評価される可能性を考える必要がある
有償テスト販売原則避けるべき販売・売上発生に該当しやすい
通常販売・サービス提供非該当リスクが非常に高い公式の非該当例に近い

この表で「比較的低リスク」としているものも、個別案件について補助対象になることを保証するものではありません。
特に無償PoCは、「売上がないから問題ない」とは言い切れません。
公式の非該当例は「販売・提供や売上が発生」となっており、売上だけでなく提供も含まれているためです。
そのため、顧客が実際に新サービスを利用する段階まで進める場合は、慎重に判断する必要があります。

「事業の開始」と「補助対象経費の発注開始」は別

もう一つ混同しやすいのが、
「新規事業をいつ開始したか」と、「補助対象経費をいつ発注できるか」です。
新事業進出枠の新規性では、公募開始日が基準になります。
一方、設備等を補助対象経費として計上する場合には、採択後の交付決定日との関係も確認する必要があります。

つまり、

「公募開始日= 新規性・事業開始の判定」と、
「交付決定日= 補助対象経費を実際に発注・契約する際の重要な基準」

は別の問題として考えます。
必ずしも、「公募が始まったから設備を発注してよい」という意味ではありません。

[新モノ補助の対象経費・対象外経費]

新事業進出枠を候補にするなら、PoCの前に制度確認を

通常の新規事業開発では、「試作 → 顧客に見せる → PoC → 改善 → 販売」と早く進めることは合理的です。
しかし、新事業進出枠を使う可能性がある場合には、その進め方と補助金の開始時期要件がぶつかることがあります。

特に、「顧客へ実際に使ってもらう・受注する・販売する」ところまで進める前に、一度制度上の扱いを確認した方が安全です。
補助金のために事業開発を止める必要はありませんが、後になって、「良い新規事業なのに、すでに始めていたため新事業進出枠を使えない」という状態になることは避けたいところです。

まとめ|グレーな部分は、無理に白黒を付けない

新事業進出枠では、

製品・サービスが自社にとって新しいか
既存事業とは異なるニーズ・属性を持つ顧客市場か
公募開始前に事業を開始していないか

をそれぞれ確認する必要があります。

一方、社内試作、顧客デモ、無償PoC、広告、予約などについては、現時点の公開資料だけでは一律に線を引きにくい部分が残っています。公式サイトでは、公募要領、応募申請ガイド、FAQ等が案内されているため、申請時には最新資料を確認する必要があります。

したがって、グレーな行為については、
「売上がないから大丈夫」「無料だから大丈夫」「既存顧客だからダメ」
と単純に判断せず、実際に何を、誰に、どの段階まで提供しているのかを確認する方が安全です。