新規事業の売上計画は、希望する売上高を置くだけでは不十分です。単価、顧客数、販売数量、営業力、人員、設備能力、原価、利益、資金繰りまでつなげ、根拠のある数値計画を作る方法を中小企業向けに解説します。

売上目標を決める前に「どうやって売上が生まれるのか」を分解する
新規事業を具体化していくと、いずれ数字を考える段階が来ます。
例えば、
「3年後に売上5,000万円を目指す」
「5年後には新規事業を売上全体の20%にする」
といった目標を置くこと自体は難しくありません。
しかし、
なぜ5,000万円売れるのか
と聞かれたとき、
「市場が成長しているから」
「営業を強化するから」
「既存顧客にも提案できるから」
だけでは、まだ売上の根拠にはなっていません。
売上計画で最初に考えたいのは、目標金額そのものではなく、
自社の新規事業では、何が何件売れることで売上が発生するのか
という仕組みです。
日本政策金融公庫でも、売上予測について「客数×客単価」のように売上高を分解し、業種によっては座席数、回転数、従業者数、設備能力などを使って具体化する方法が示されています。設備が直接売上に結びつく製造業では、「加工単価×設備能力×設備台数×稼働日数」といった考え方も紹介されています。
新規事業の数値計画も、まずはここから始めます。
「売上計画」「損益計画」「資金計画」は分けて考える
新規事業の数字を考えるとき、
「売上がいくらになるか」
だけに目が向きがちです。
しかし、実際には少なくとも3段階に分けて考える必要があります。
| 計画 | 主に確認すること | 代表的な数字 |
|---|---|---|
| 売上計画 | どのくらい売れるのか | 単価、顧客数、販売数量、契約数、利用回数 |
| 損益計画 | 売れた結果、利益が残るのか | 原価、人件費、外注費、減価償却費、営業利益 |
| 資金計画 | 事業を続けるための現金が足りるのか | 設備投資、入出金時期、運転資金、借入、返済 |
例えば、売上が増えて利益が出る計画になっていても、設備代を先に支払う、在庫を積み増す、売掛金の入金が数か月後になる、といった事情があれば、途中で資金が不足する可能性があります。
J-Net21でも、利益が出ていても在庫や売掛金の増加、借入金返済などによって現金が不足することがあり、「利益」と「資金」は一致しないことが説明されています。
したがって、
売れるのか → 儲かるのか → お金が回るか
を順番に確認する必要があります。

売上高は、事業の形に合わせて分解する
売上の計算式は事業によって変わります。例えば、次のように考えられます。
| 事業の例 | 売上の分解例 |
|---|---|
| BtoB製品販売 | 単価 × 顧客数 × 1社当たり購入数量 |
| 定額サービス | 月額料金 × 契約社数 × 12か月 |
| 保守・コンサルティング | 1件当たり料金 × 案件数 |
| 店舗型サービス | 客単価 × 客数 × 営業日数 |
| EC | 訪問者数 × 購入率 × 平均購入単価 |
| 製造業 | 単価 × 生産数量 |
| 継続購入型商品 | 顧客数 × 1回当たり購入額 × 購入回数 |
大切なのは、売上高という一つの数字を、その会社が実際に管理できる数字まで分解することです。
例えば、
「年間売上3,600万円」
だけでは何をすればよいか分かりません。
しかし、
月額10万円 × 30社 × 12か月=3,600万円
なら、
「30社をどう獲得するか」
という次の問いが出てきます。
さらに、
「営業できる企業は何社あるのか」
「何社に提案すれば30社契約できるのか」
「30社へサービスを提供できる人員がいるのか」
と、計画を具体化できます。
市場規模から売上を逆算するだけでは弱い
新規事業の計画では、
「市場規模100億円のうち1%を獲得し、売上1億円を目指す」
という説明を見かけることがあります。
市場規模から将来の売上を考える方法は、事業の大きさを確認するうえでは役立ちます。
ただし、
なぜ自社がその1%を取れるのか
が説明できなければ、売上の根拠としては十分ではありません。
そこで、市場規模から見るマクロの計算と、自社の営業・顧客から積み上げるミクロの計算を両方行います。
マクロから見る
例えば、
対象企業5,000社 × 想定導入率10% × 年間単価100万円
なら、
潜在的な市場は5億円と考えられます。
これは、
「この事業に十分な市場があるのか」
を見る数字であり、実際にどれだけ売れるかはミクロ視点での分析も必要です。
ミクロから見る
一方、
営業対象200社
↓
商談できる企業80社
↓
具体的に提案できる企業40社
↓
契約20社 × 年間100万円
なら、
初期に現実的に狙える売上は2,000万円となります。
こちらは、
「自社が実際に取れそうな売上はいくらか」
を見る数字です。
前回の市場調査ページで扱った、
市場全体を見るマクロ視点と、具体的な顧客を見るミクロ視点
は、数値計画でもそのまま使えます。

単価には「その金額にした理由」が必要
売上計画を作るとき、意外に曖昧になりやすいのが単価です。
例えば、
「1台300万円」「月額10万円」「1回5万円」
と設定しても、なぜその価格なのかを検証する必要があります。
考える材料としては、
- 競合商品・サービスの価格
- 顧客が現在使っている代替手段の費用
- 顧客が問題を解決するために負担している人件費や外注費
- 顧客ヒアリングや試験販売で確認した価格反応
- 自社の原価
- 必要な利益
などがあります。
ここでも、
原価だけから価格を決めない
ことが重要です。
例えば製造原価が70万円だから100万円で売る、というだけでは、顧客が100万円を払う理由までは説明できません。
一方、
「この設備停止によって年間300万円程度の損失が発生している」
という顧客課題が確認できていれば、価格を考える際の材料が増えます。
価格は、
自社にとって採算が取れるか
と、
顧客にとってその価格を払う価値があるか
の両面から考えます。
顧客数は「市場に何社いるか」ではなく「どうやって獲得するか」まで考える
売上計画でもう一つ曖昧になりやすいのが、顧客数です。
例えば、「3年後に50社へ販売する」という計画を作ったとします。
ここで確認したいのは、その50社が、どのように顧客になるのかです。
BtoBであれば、

という流れがあります。
仮に、契約20社を目標としていて、
「提案した企業の4社に1社程度が契約する」
という仮説を置くのであれば、少なくとも80社程度への提案が必要になります。
ところが、自社の営業人員では年間30社にしか提案できないのであれば、
契約20社という計画と営業体制がつながっていないことになります。
逆に、既存顧客100社があり、そのうち30社から既に具体的な関心が示されているのであれば、同じ20社という目標でも根拠は変わります。
このように、
「顧客数」ではなく、「顧客が増えていく過程」まで数字にする
と、売上計画の現実性を確認しやすくなります。

既存顧客を使えることは強みだが「全部売れる」とは考えない
既存企業が新規事業に取り組む場合、創業企業との大きな違いの一つが既存顧客です。
例えば既存顧客が100社あるなら、ゼロから100社を探す必要はありません。
営業関係があり、顧客の設備や業務内容も理解していれば、新規事業の初期顧客を見つけやすくなります。
ただし、
「既存顧客100社があるので、そのうち30社には売れるだろう」
と、そのまま計画に使うのは危険です。
既存商品を買っている理由と、新規商品を買う理由は同じとは限りません。
そこで、
既存顧客100社
↓
新規事業の課題を持つ顧客40社
↓
具体的に提案できる顧客25社
↓
試験導入5社
↓
本契約3社
というように、一段ずつ確認していきます。
市場調査で得た情報が、そのまま売上計画の入口になります。
初年度の売上は「年間売上÷12」で考えない
3年後・5年後の売上計画を考えるとき、初年度から毎月均等に売れるとは限りません。
特に新規事業では、
試作品を作る
↓
試験導入する
↓
改善する
↓
営業を始める
↓
初回契約を取る
という時間が必要です。
例えば年間1,200万円の売上を見込んでいるからといって、
毎月100万円
と置くと、事業立ち上げの実態と合わない場合があります。
最初の3か月は売上ゼロ、4か月目から試験販売、7か月目から本格販売、という事業もあります。
日本政策金融公庫も、詳細な収支計画を策定するための「月別収支計画書」を公開しています。
特に初年度は、
月単位で売上が立ち上がる過程を見る
と、必要な資金も見えやすくなります。
「売れる量」と「提供できる量」は一致しているか
顧客ニーズがあり、営業もできたとしても、商品やサービスを提供できなければ売上にはなりません。
数値計画では、
需要側だけでなく、供給側の上限
も確認します。
例えば製造業であれば、
設備の生産能力 × 稼働時間 × 稼働日数
以上の商品を製造することはできません。
日本政策金融公庫でも、設備が直接売上につながる業種では、設備の生産能力・設備数・稼働日数などから売上を計算する方法が示されています。
サービス業でも同様です。
1件のサービス提供に5時間かかり、担当者が月100時間を新規事業に使えるなら、理論上対応できる件数には上限があります。
実際には、
営業活動・移動・事務処理・問い合わせ対応・教育・休暇
なども必要なので、100%を顧客対応に使えるわけでもありません。
したがって、売れる見込みだけではなく、売れても対応できるかまで確認する必要があります。
売上計画は4つの整合性で確認する
新規事業の売上計画は、私は次の4つがつながっているかを見ると整理しやすいと考えています。
① 市場・顧客との整合
本当にその課題を持つ顧客がいるか。
その価格を払う可能性があるか。
② 営業活動との整合
必要な顧客数を獲得するだけの営業対象、商談数、提案件数を確保できるか。
③ 人員・設備との整合
受注した商品・サービスを実際に生産・提供できるか。
④ 利益・資金との整合
売れば売るほど赤字にならないか。
売上が増えるほど資金不足にならないか。
例えば、「30社から受注できる」という数字だけを見るのではなく、
30社のニーズがある
→ 30社を獲得できる営業活動ができる
→ 30社へサービスを提供できる
→ 30社売れば利益と資金が残る
までつながって初めて、数字が一つの事業計画になります。

売上が出たら、次に「いくら残るか」を確認する
売上が見えてきたら、次に費用を積み上げます。
例えば、
売上高
- 材料費・仕入
- 外注費
- 人件費
- 家賃・システム利用料等
- 減価償却費
- その他経費
= 利益
という流れです。
このとき、費用を大きく、
売上が増えると増える費用(変動費)と、売上が少なくても一定程度発生する費用(固定費)
に分けると考えやすくなります。
前者は材料費、仕入、販売手数料など。
後者は家賃、人件費の一部、システム利用料などです。
管理会計上は、こうした費用を変動費と固定費に分けて損益分岐点を見る方法があります。
J-Net21でも、利益がゼロになる売上高を「損益分岐点売上高」とし、売上と費用の関係を確認する方法が紹介されています。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
例えば、
「年間3,000万円売れそうだ」
だけではなく、
何万円売れば赤字を脱するのか
を確認することで、必要な顧客数が変わります。
「何社売れば黒字になるか」まで戻してみる
損益分岐点は、経営指標として計算するだけでなく、事業計画へ戻して使うことができます。
例えば、
固定費等を賄うために年間2,400万円の売上が必要で、1社当たり年間120万円の売上が発生するのであれば、
単純化すると、
2,400万円 ÷ 120万円=20社
です。つまり、
「少なくとも20社程度の契約が必要」
という形に変換できます。
その20社について、
市場調査では見込みがあるか。
営業体制で獲得できるか。
サービス提供できるか。
まで戻ります。
こうして、
売上計画 ↔ 損益計画
を往復すると、数字の無理が見えやすくなります。
人員を増やさず売上だけ増える計画になっていないか
新規事業の数値計画では、売上だけが右肩上がりになり、人員や経費がほとんど変わらない計画になることがあります。
もちろん、ソフトウェアやデジタルサービスのように、売上増加に対して人員がそれほど増えない事業もあります。
しかし、人がサービスを提供する事業で、
売上1,000万円
↓
3,000万円
↓
5,000万円
と増えているにもかかわらず、担当者1人のままであれば、「本当に対応できるのか」を確認する必要があります。
反対に、売上が立ち上がる前から人を増やす場合には、
人件費が先に発生する期間
も計画に入れなければなりません。
そこで、
売上
↓
必要作業量
↓
必要人員
↓
採用・配置時期
↓
人件費
とつなぎます。
既存社員を使う場合も「人件費ゼロ」とは考えない
既存企業の新規事業では、
「既存社員が兼任するので、新たな人件費はかからない」
と考えることがあります。
会計上、新規採用がなければ会社全体の給与総額がすぐ増えるわけではありません。
しかし、事業計画上は、
その社員が新規事業に時間を使うことで、既存事業にどのような影響が出るか
を確認する必要があります。
例えば営業担当者が勤務時間の30%を新規事業に使うなら、その30%の時間は既存事業の営業には使えません。
技術者を新規事業へ移せば、既存顧客への対応能力が下がる可能性もあります。
したがって、
「追加費用がない」ことと「経営資源を使っていない」ことは同じではありません。
これは既存企業の新規事業で特に注意したい点です。
設備投資は「売上」と「導入時期」をつなげる
設備が必要な新規事業では、「この設備を買いたい」から設備投資額を決めるのではなく、
なぜその設備が必要なのか
を売上計画と結びつけます。
例えば、
既存設備では月500個まで
↓
新規事業では月800個必要
↓
300個分の能力が不足
↓
設備増強が必要
という流れです。
また、
設備を導入した月からすぐフル稼働するとは限りません。
設置
↓
試運転
↓
社員教育
↓
試作品製造
↓
量産
という期間も考慮します。
「経営革新計画の財務計画」ページでは、設備投資、運転資金、減価償却費を詳しく扱っているため、本ページでは設備投資額そのものより、
売上計画と設備能力がつながっているか
を中心に扱います。
「利益が出る」と「現金が残る」は同じではない
新規事業では、利益計画だけでなく資金繰りも確認します。
例えば、
4月に商品を販売して売上を計上
↓
顧客からの入金は6月
という場合、4月に利益が計上されても現金はまだ入っていません。
一方、
材料費、人件費、外注費、設備代
などは先に支払う場合があります。
また、在庫を増やせば現金が商品に変わります。
借入金の元金返済も、損益計算上の費用とは別に現金が出ていきます。
J-Net21でも、利益と現金収支は一致せず、売掛金や在庫、借入金返済などによって黒字でも資金不足になる可能性が説明されています。(J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト])
特に、
- 開発期間が長い
- 大きな設備投資を行う
- 在庫を持つ
- 売掛金の回収期間が長い
- 人員を先行採用する
事業では、初年度を中心に月別の資金繰りを確認した方がよいでしょう。

一つの数字だけでなく、条件が変わった場合も考えておく
新規事業の数字は、あくまで将来予測です。
実際には、
販売開始が3か月遅れる
契約件数が想定より少ない
原材料価格が上がる
想定した単価で売れない
採用が遅れる
といったことが起こります。
そこで、重要な前提については、計画どおりの場合だけでなく、少し悪化した場合も一度確認しておきます。
例えば、
基本ケース:30社
慎重ケース:20社
として、
20社でも固定費を賄えるのか。
資金は何か月持つのか。
追加採用は必要か。
を見る方法です。
ここで重要なのは、悲観的な数字を大量に作ることではありません。
計画を大きく左右する前提が何かを知ること
です。
例えば、
顧客数なのか
単価なのか
原価なのか
販売開始時期なのか
を把握しておけば、事業開始後に何を重点的に管理すべきかも見えてきます。
数値計画は「予言」ではなく「仮説」と考える
新規事業では、3年後の売上を正確に予測することはできません。
それでも計画を作る意味があります。
それは、
未来を当てるためではなく、何が成立すれば事業が成り立つのかを明らかにするため
です。
例えば、「30社契約できれば黒字になる」のであれば、30社という数字そのものより、「30社を獲得できるか」
が重要な仮説になります。
さらに、
「月額10万円でなければ成立しない」
のであれば、
10万円という価格を顧客が受け入れるかを早めに検証できます。
数字を入れることで、
まだ確認できていないことが見える
わけです。
市場調査と数値計画は別々の作業ではありません。
市場調査で仮説を立てる
→ 数字にする
→ 数字の弱い部分を見つける
→ もう一度顧客や市場を調べる
という往復を行います。
A社の新規事業を数字で見るとどうなるか
当サイトの架空事例A社では、工作機械の保守サービスを発展させ、月額型の延命支援サービスを新規事業として検討しています。
最終年度の売上について、
月額平均10万円 × 契約30社 × 12か月=年間3,600万円
という計算を置いています。
計算自体は簡単です。
しかし、重要なのは、
「30社」と「10万円」はどこから出てきたのか
です。
A社では、まず市場全体を確認したうえで既存顧客を調査し、さらに少数企業で試験導入するという流れを取っています。
そこから、
顧客課題はあるか
↓
10万円という価格を受け入れるか
↓
30社を獲得できるか
↓
30社へサービス提供できるか
↓
必要な人員を確保できるか
を確認します。
つまり、
3,600万円という数字を先に置くのではなく、3,600万円が成立する条件を一つずつ確認する
ことが重要です。
よくある数値計画の作り方と、確認したいポイント
「3年後に1億円」と先に決める
目標として置くこと自体は問題ありません。
ただし、
1億円=何を何件売った結果なのか
まで考える必要があります。
市場規模の1%を売上にする
市場性を見る参考にはなります。
ただし、
なぜ1%を獲得できるのか
を営業活動や顧客数で確認する必要があります。
既存顧客の30%が買うと仮定する
既存顧客は大きな経営資源ですが、新規商品へのニーズがある顧客とない顧客を分けて考えます。
売上だけ増やし、人員や設備を変えない
提供能力を確認します。
売上増加に合わせて原価も一定割合で増やすだけ
数量増加による仕入価格変化、外注、固定費増加などがないか確認します。
最終年度だけ黒字にする
途中で必要な現金がなくならないか確認します。
制度の数値目標から逆算して数字を作る
経営革新計画や補助金では、付加価値額、給与、労働生産性など一定の数値目標が求められる場合があります。
しかし、
制度の基準を満たす数字を先に作り、あとから事業内容を合わせる
のでは順番が逆です。
まず事業として成立する数字を作り、その結果を制度で求められる指標へ変換します。
一つの数値計画を、複数の制度へ展開する
事業そのものの数字が整理できれば、制度ごとに毎回ゼロから計算する必要はありません。
例えば共通の数値計画として、
売上・原価・人件費・設備投資・減価償却費・利益・資金需要
まで整理します。
そのうえで制度ごとに必要な数字へ組み替えます。
| 活用先 | 特に確認される数字・視点 |
|---|---|
| 経営革新計画 | 売上・利益に加え、付加価値額、給与支給総額など |
| 補助金 | 投資額、事業収益、付加価値、賃金など制度ごとの指標 |
| 経営力向上計画 | 労働生産性など経営力向上を示す指標 |
| 融資 | 必要資金、収益性、資金繰り、返済原資 |
| 社内事業計画 | 売上、利益、投資、人員、採算性 |
経営革新計画では、現在も3~5年間の計画期間に応じて、付加価値額または一人当たり付加価値額、給与支給総額の伸び率が目標指標となっています。
経営力向上計画では、基本方針に基づく場合は労働生産性などを使って現状値と計画終了時の目標値を示します。(中小企業庁)
また、2026年の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」でも、補助事業終了後3~5年の事業計画について、付加価値や給与等に関する目標が設定されています。(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金|中小企業基盤整備機構)
つまり、
共通の事業数値
→ 制度ごとの指標へ変換
という順番です。
【新規事業の骨子とは?】
【新規事業を支援する補助金・経営革新計画・支援制度】
融資では「返せるか」という視点が加わる
補助金や認定制度と融資では、同じ事業計画を使っても見る角度が少し変わります。
融資では、
「この事業が成長するか」
だけでなく、
借入金を返済できるだけの収益・資金が生まれるか
も重要になります。
日本政策金融公庫の新事業活動促進資金でも、新市場進出や事業転換等に必要な設備資金・運転資金が融資対象となっており、一定の場合には事業計画の策定が制度上位置づけられています。(新事業活動促進資金)
したがって、
売上 → 利益 → 現金収支 → 借入返済
までつなげておけば、同じ新規事業の骨子を融資相談にも展開しやすくなります。
数字を作ったら「文章と数字が同じ事業を説明しているか」を確認する
数値計画で最後に確認したいのが、文章との整合です。
例えば本文では、
「まず既存顧客を中心に小さく展開する」
と書いているのに、初年度から数百社へ販売する数字になっている。
本文では、
「高度な個別対応が強み」
と書いているのに、少人数で大量の顧客を処理する計画になっている。
本文では、
「設備能力が不足しているため新設備を導入する」
と書いているのに、設備導入前から生産量が急増している。
こうしたズレがないか確認します。
文章は事業の仕組みを説明し、数字はその仕組みを別の角度から説明するものです。
両方が同じストーリーになっていることが重要です。
どこまで数字を作れば、次へ進んでよいのか
新規事業の初期段階から、3年後・5年後まで1円単位で精密な計画を作る必要はありません。
まずは、
- 売上がどのような計算式で発生するか
- 単価に一定の根拠があるか
- 顧客数を獲得する道筋があるか
- 人員・設備で対応可能か
- 売上から主要な費用を引いて利益が残るか
- いつ設備投資や採用が必要になるか
- 売上が想定より少ない場合でも資金が持つか
を確認できれば、事業の成立性についてかなり具体的に議論できるようになります。
新しい情報が得られたら、その都度数字を更新すれば構いません。
むしろ、
数字を一度決めたら変えないことより、根拠が変わったら数字も変えること
の方が、新規事業では自然です。
数値計画は「申請書のため」ではなく、事業を判断するために作る
経営革新計画や補助金の申請では、売上、利益、付加価値、人件費などの数字を求められます。
そのため、「申請書に数字を書く必要があるから数値計画を作る」と思われがちです。
しかし、本来の目的はその前にあります。
この事業は本当に売れるのか。
売れても利益が残るのか。
人員や設備で対応できるのか。
資金は途中で不足しないのか。
を、自社自身が確認するためです。
市場調査で、「顧客が困っている」ことが確認できても、事業として成り立つとは限りません。
反対に、数字上は利益が出ても、顧客が必要としていなければ売れません。
そのため、
顧客ニーズ → 売上根拠 → 提供体制 → 利益 → 資金
を一つにつなげて考えます。
そして、この数字の土台まで整理できれば、
新規事業の骨子 → 経営革新計画 → 補助金 → 融資
へ展開するときにも、制度ごとにゼロから数字を作り直す必要が少なくなります。
まとめ
新規事業の数値計画で重要なのは、
「いくら売りたいか」ではなく、「なぜその売上になるのか」を説明できることです。
売上を、単価 × 顧客数 × 数量・回数 などへ分解し、
さらに、
市場・顧客 → 営業活動 → 人員・設備 → 費用・利益 → 資金
までつなげます。
市場規模が大きくても、自社が顧客を獲得できなければ売上にはなりません。
顧客が買いたいと言っていても、提供能力がなければ売れません。
利益が出ていても、入金より支払いが先なら資金が不足することがあります。
したがって数値計画は、
売上予測を当てる作業ではなく、事業が成立するための条件を数字で確認する作業
と考えると分かりやすくなります。
