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【事例分析】新商品は完成したのになぜ売れない?サンコーの事例から考える事業化

新商品は完成したのになぜ売れない?サンコーの事例から考える事業化のポイント

商品を作ることと、事業にすることは違う

当サイトでは、新規事業について、商品・サービスを考えて開発する段階と、その後に継続して売上や利益を生み出す「事業化」の段階を分けて考えています。

商品を完成させることは重要です。しかし、実際に販売を始めてみると、

「思ったほど売れない」
「問い合わせはあるのに購入につながらない」
「話題にはなったのに売上が伸びない」

といったことも起こります。

そこで当サイトでは、開発後の事業化について、

事業化ストーリーを考える
 → 事業化を阻む壁を確認する
  → ロードマップに沿って市場で確かめる
   → KPIを見ながら修正する

という流れで整理しています。

ただ、考え方だけでは実際にどのように使うのか分かりにくいところもあります。

そこで今回は、ユニークな商品を継続的に生み出しているサンコー株式会社の公開事例を題材に、当サイトで説明してきた「事業化」の考え方を具体的に当てはめてみます。

なお、本記事はサンコー株式会社や個別商品の経営判断を評価することを目的としたものではありません。公開情報から確認できる事実と、そこから中小企業の事業化について考えられることを分けて説明しています。

サンコーの強みは、商品を市場に出し続けられること

サンコーは、ネッククーラーや小型の食洗機をはじめ、身近な不便や不満に着目したユニークな商品を数多く生み出している企業です。

特徴的なのは、アイデアを考えるだけではなく、実際の商品として市場へ送り出し、その結果から次の商品開発につなげていることです。

公開された取材記事によると、サンコーでは全従業員が商品企画案を社内のWeb掲示板へ投稿する仕組みがあり、2025年には292件の案が投稿されました。そのうち検討・調査に進んだものが18件、実際に商品化されたものは5件でした。商品化の判断では、技術的な実現性だけでなく、「その売価で本当に売れるのか」といった現実的な検討も行われています。 (東洋経済オンライン)

つまり、思いついた商品をすべて作っているわけではありません。

アイデアを出す → 検討する → 絞り込む → 商品にする → 市場で確かめる

という試行錯誤を繰り返しています。

さらに、期待どおりに売れなかった商品についても隠すのではなく、レビューや問い合わせ、SNSなどから得られた反応を次の商品開発に生かしていることが紹介されています。 (東洋経済オンライン)

新規事業では、すべての企画を最初から成功させることは難しいものです。その中で、挑戦を続けながら市場から学べること自体が、サンコーの強みの一つと言えるでしょう。

「くるさらウォッシュ」は、どのような商品だったのか

今回取り上げるのは、2018年に発売された「くるさらウォッシュ」です。
食器を本体でつかみ、食器そのものを回転させながらブラシやスポンジで洗う、手持ちタイプの食器洗い機でした。

サンコーの公式商品ページでは、
食器洗いによる手荒れを防ぎたい人】や、【一般的な食洗機を置くことが難しい家庭】
に向けた商品として紹介されています。

発売価格は10,280円。充電式で、食器をつかんで回転させながら洗うという、非常に特徴のある商品でした。 (THANKO|【公式】サンコー通販サイト)

ここで注目したいのは、単に「変わった商品を作った」ということではありません。
この商品には、

手荒れを減らしたい
大型の食洗機は置けない

という顧客の困りごとがあり、それを解決するための商品として実際に形にされています。

つまり、

顧客の困りごとを見つける
→ 解決方法を考える
→ 実際の商品として完成させる

ところまでは進んでいます。
ところが、販売では想定どおりにはいきませんでした。

SNSで約99万インプレッション。それでも売れたのは1個

この商品の事例が特に興味深いのは、単に「知られなかった商品」ではないことです。

東洋経済オンラインの記事では、「くるさらウォッシュ」がSNSで約99万インプレッションを集めるほど話題になったものの、その反響で売れた商品は1個だったことが紹介されています。また、在庫を売り切るまでにもかなり苦労したとされています。

つまり、【多くの人に知られる】ことには成功していました。
それでも、【実際に購入してもらう】ところには十分につながらなかったわけです。

ここに、新商品開発と事業化の違いがよく表れています。

事業化ストーリーで見ると「商品と売上の間」が見えてくる

当サイトの「事業化ストーリーの作り方」では、新しい商品があるから売上が生まれる、と単純には考えません。

基本的には、

経営資源
 → 提供する仕組み
  → 顧客に生まれる成果
   → 売上・利益などの事業成果

というつながりで考えます。
「くるさらウォッシュ」の事例でも、商品そのものには明確な特徴があります。

さらに、

手荒れを避けたい
食洗機を設置できない

という想定された顧客課題もあります。
それでも、商品を作っただけでは売上にはなりません。

その先に、

その困りごとはどの程度強いのか
この商品を使って解決したいと思うのか
現在の方法から切り替えるだけのメリットを感じるのか
提示された価格でも購入したいと思うのか

という段階があります。
もちろん、公開情報だけから「このどこに原因があった」と断定することはできません。
ただ、この事例から分かるのは、

顧客の困りごとを見つける → 商品を作る → 顧客が価値を感じる → 実際に購入する

という流れは、自動的につながるわけではないということです。

当サイトで「事業化ストーリー」を作るのも、この商品と売上の間を確認するためです。
関連記事:新規事業の事業化ストーリーの作り方|売上・利益までの道筋をつなぐ

「市場の壁」は商品完成後にも現れる

当サイトでは、新規事業の事業化を阻む課題を、

「市場の壁」「技術の壁」「資金の壁」「社内の壁」

の4つに整理しています。
今回の事例で特に考えやすいのが、市場の壁です。
「くるさらウォッシュ」は商品として完成し、販売され、多くの人にも知られました。

それでも、販売には苦戦しています。
ここから考えたいのは、

「困っている人がいる」ことと、「市場が成立する」ことは同じではない

ということです。

例えば新商品を事業化する際には、

  • その困りごとを持つ顧客はどの程度いるのか
  • 困りごとはどれだけ深刻なのか
  • 現在の解決方法にどの程度不満があるのか
  • 新商品へ切り替えるだけのメリットがあるのか
  • その価値に対して価格を受け入れてもらえるか

まで確認する必要があります。
「ニーズがありますか」と聞いて、「ある」という答えが返ってきても、それだけでは十分ではありません。

「その問題を解決するために、実際にお金を払うか」

まで確認して初めて、事業化の可能性が見えてきます。

なお、実際の新規事業では「売れない」という結果に、市場だけでなく、コスト、技術、提供体制、社内体制など複数の問題が影響していることもあります。
そこで当サイトでは、問題を4つの壁に分けて考えています。

関連記事:新規事業の事業化を阻む4つの壁|市場・技術・資金・社内の課題

サンコーの現在の取り組みから「事業化ロードマップ」を考える

今回の事例でもう一つ参考になるのが、サンコーが現在行っている商品化の進め方です。

先ほど触れたように、2025年に292件あった商品企画案のうち、実際の商品化まで進んだものは5件でした。技術面だけでなく、想定される売価で販売できるかといった点も検討されています。

さらに商品によっては、最初から大量生産するのではなく、まず少ロットで生産して市場の反応を見て、売れ行きが良ければ次の生産数量を増やすという方法も取られています。同社では、これを実際の市場で行う調査として捉えています。 (東洋経済オンライン)

これは、当サイトで説明している「事業化ロードマップ」を具体的にイメージするうえで参考になります。

当サイトでは、商品開発後の事業化を、

商品・サービスを仕上げる
  ↓
採算と提供条件を固める
  ↓
継続して提供できる体制を整える
  ↓
実際の顧客で確かめる
  ↓
本格展開する

という段階で考えています。

ポイントは、商品が完成したらすぐに大きく展開するのではなく、途中に**「実際の顧客で確かめる」**段階を置くことです。

例えば、

小さく市場へ出す
→ 顧客の反応を見る
→ 想定との違いを確認する
→ 必要なら修正する
→ 見込みが確認できたら広げる

という進め方です。
最初から市場を完全に予測するのが難しい新規事業だからこそ、途中で確認しながら進めることが重要になります。
サンコーの少ロットで市場反応を見る方法は、その考え方を実際の企業活動としてイメージしやすい例です。

※なお、「くるさらウォッシュ」の経験が直接この方法につながったと公開情報から確認できるわけではありません。その点は分けて考える必要があります。

関連記事:新規事業の事業化ロードマップの作り方|開発後から本格展開までの進め方

約99万インプレッションから考える「KPI」

「くるさらウォッシュ」の事例は、KPIについて考えるうえでも分かりやすい例です。
約99万インプレッションという数字だけを見ると、大きな反響です。
しかし、事業化の目的が「話題になること」ではなく、商品を継続的に販売して事業として成立させることであれば、その先を見る必要があります。

例えば、

認知された → 興味を持った商品を詳しく調べた → 購入を検討した → 実際に購入した

という流れです。

最初の数字が大きくても、その途中で顧客が大きく減っていれば、売上にはつながりません。

サンコー側も取材の中で、SNSで話題になる商品と実際に売れる商品は同じではないという考えを示しています。
当サイトの「KPI・進捗管理」でも、最終的な売上だけではなく、成果につながる途中の動きも確認することを重視しています。

例えば中小企業の新商品であれば、

成果を見る指標

  • 問い合わせ数
  • 商談数
  • 購入件数
  • 売上
  • 粗利益
  • 継続利用

だけでなく、

成果につながる行動

  • 顧客ヒアリング
  • 提案
  • 試用
  • 購入後のフォロー
  • 商品改善

なども確認します。

売上が少ない場合でも、「そもそも顧客へ十分に働きかけていない」のか、「十分に働きかけているのに購入されない」のかでは、見直すべきところが違います。
KPIは単に数字を管理するためではなく、どこに問題があるのかを見つけるために使うものです。

関連記事:新規事業のKPI・進捗管理|成果と行動を確認しながら事業化を進める

サンコーの強みは「売れなかった」で終わらないこと

今回、サンコーの事例を取り上げた理由は、単に「珍しい商品が売れなかった」という話が面白いからではありません。むしろ注目したいのは、その後です。

サンコーではレビューや問い合わせ、SNSでの反応などから、商品の改善点や次の商品開発につながる情報を拾っています。さらに、多数の商品企画に挑戦しながら、ネッククーラーや食洗機「ラクア」のように長く売れ続ける商品も生み出しています。

長く売れる商品を事業の柱にしながら、新しい商品への挑戦を続ける。
そして商品によっては、少量から市場へ出して反応を確認する。
このように見ると、サンコーの強みは単に「面白い商品を思いつくこと」だけではありません。
市場へ出し、結果を受け止め、次の判断につなげられること
にもあります。
新規事業では、計画段階ですべてを当てることはできません。

それだけに、
市場へ出す → 結果を見る → 学ぶ → 次へつなげる
という仕組みを持てるかどうかは重要です。

この事例を、当サイトの事業化の考え方で整理すると

今回の事例を、当サイトで説明している考え方に当てはめると次のようになります。

実際の事例事業化で見るポイント
身近な困りごとに着目顧客課題
独自の商品として実現商品・サービスの開発
商品を実際に市場へ投入顧客による検証
大きな注目と販売結果に差が生じた市場の壁
市場の反応から学ぶKPI・モニタリング
少ロットで市場を見る商品もある事業化ロードマップ
次の商品開発へ挑戦を続ける改善・再検証

こうして見ると、

商品を作る → 売る
という2段階だけでは、新規事業の実態を捉えにくいことが分かります。
その間には、

顧客にどのような価値があるのか
本当に購入されるのか
市場の反応はどうか
想定と違った場合にどう修正するのか

という確認があります。
これが、当サイトで商品開発の後に「事業化」という段階を分けて考えている理由です。

自社の商品なら何を確認するか

新しい商品・サービスを完成させたら、販売量だけを見る前に、次の点を確認してみてください。

  1. 誰の、どのような困りごとを解決する商品か
  2. その困りごとは、お金を払って解決したいほど強いか
  3. 商品を使うことで顧客にどのような成果が生まれるか
  4. 現在の解決方法から切り替える理由があるか
  5. 価格を示した状態でも購入したいと思ってもらえるか
  6. 本格展開する前に、実際の顧客で確認できているか
  7. 認知だけでなく、問い合わせ・商談・購入まで確認しているか
  8. 結果が想定と違ったとき、前の段階へ戻って修正できるか

特に、「良い商品だと思う」という社内の評価と、
「実際に顧客がお金を払う」ことは分けて確認する必要があります。

実例に当てはめると「事業化」の役割が見えてくる

当サイトでは、事業化を複数のページに分けて説明しています。
それぞれ単独のフレームワークとして使うというより、実際の事業を違う角度から確認するためのものです。

事業化ストーリー
商品から顧客価値、売上までの道筋がつながっているかを見る。

事業化を阻む4つの壁
市場・技術・資金・社内のどこに問題があるのかを見る。

事業化ロードマップ
本格展開までを段階に分け、どこで何を確認するかを考える。

KPI・進捗管理
最終結果だけでなく、途中の成果や行動から問題を見つける。

そして、これらをまとめた全体像を「新規事業の事業化とは?」のページで整理しています。

今回のサンコーの事例から学びたいのは、「売れない商品を作らない方法」だけではありません。
新しい商品へ挑戦すれば、当初の想定と実際の市場の反応が違うことはあります。

重要なのは、その結果を見て、

市場で確かめる → 原因を考える → 必要なら修正する → 次につなげる

という流れを作ることです。

商品を完成させることをゴールにせず、実際の市場から学びながら、継続して売上・利益を生み出せる形へ近づけていく。それが、本サイトで考える新規事業の「事業化」です。

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→ 市場・技術・資金・社内の課題を確認します

新規事業のKPI・進捗管理|成果と行動を確認しながら事業化を進める
→ 事業化がどこまで進んでいるのかを確認します

参考資料

サンコー公式「くるさらウォッシュ」商品ページ
東洋経済オンライン「“バズ狙い”だけでは売れない…サンコー流ものづくりの舞台裏」