新規事業のKPI・進捗管理
新規事業の事業化では、売上などの最終成果だけでなく、その成果につながる行動が実行できているかを確認することが重要です。成果指標と行動の進捗を組み合わせ、事業化の進み具合を確認しながら計画を見直す方法を解説します。

新規事業のKPI・進捗管理
新規事業の計画を作り、実行を始めた後は、定期的に進み具合を確認します。
そのとき、
「売上目標に届いたか」
「新規顧客を獲得できたか」
といった結果だけを見ていると、問題が分かったときにはかなり時間が経っていることがあります。
例えば、売上が計画を下回っていたとしても、それだけでは原因は分かりません。
顧客への提案そのものが少なかったのか。
提案は十分に行ったものの、商談につながらなかったのか。
商談にはなったものの、価格や条件が合わず受注できなかったのか。
原因によって、次に行うことは変わります。
そのため、事業化の進捗管理では、
「どのような成果が出たか」と「そのための行動ができているか」を分けて確認します。

KPIは「数字を管理するため」だけのものではない
KPIというと、売上や件数を管理するための数字という印象があるかもしれません。
しかし、新規事業では、数字を達成することそのものが目的ではありません。
必要なのは、
事業化が予定した方向へ進んでいるかを確認すること
です。
例えば、「問い合わせ20件」という数字だけを設定しても、それが事業化にどうつながるのか分からなければ、管理する意味は薄くなります。
経営資源 → 提供する仕組み → 顧客成果 → 事業成果
の中から、特に重要な部分を選び、進み具合を数字で確認できるようにします。
つまり、何でも数字にするのではなく、事業化の道筋を確認するために数字を使うということです。
「成果指標」と「行動の指標」を分ける
事業化の進捗を見る際には、大きく二種類の指標を使います。
1.成果指標|結果として何が起きたかを見る
成果指標は、目指していた状態にどの程度近づいたかを見るための指標です。
例えば、
- 新規顧客数
- 受注件数
- 売上高
- 粗利益率
- 継続利用率
- 不良率
- 顧客満足
- 原価
などです。
事業によって見る数字は異なります。
重要なのは、事業化ストーリーの中で重要な成果を選ぶことです。
2.行動の指標|必要な取り組みが進んでいるかを見る
もう一つは、成果を生むための行動が実際に行われているかを見る指標です。
例えば、
新規顧客を増やす
という成果を目指しているのであれば、
- 顧客への訪問件数
- ヒアリング件数
- 提案件数
- 試験導入件数
などが考えられます。
人材育成であれば、
- 研修の実施回数
- 必要な技能を習得した人数
- 社内での情報共有回数
などを見ることもできます。

成果が出ていないときは、行動とセットで見る
成果指標と行動指標を分ける一番の意味は、結果が出なかった原因を考えやすくすることです。
例えば、新規顧客の獲得が目標を下回っていた場合、次のように考えます。
行動が不足している
提案件数そのものが少なければ、まずは行動を増やす必要があります。
営業に使える時間が不足しているのかもしれません。
担当者が決まっていないのかもしれません。
必要な営業資料がそろっていない可能性もあります。
行動しているのに成果が出ていない
十分な件数を提案しているのに受注につながらないのであれば、単純に行動量を増やしても改善しない可能性があります。
その場合は、
- ターゲットは適切か
- 顧客の課題を正しく捉えているか
- 提供価値が伝わっているか
- 商品・サービスの内容は合っているか
- 価格や提供条件に問題はないか
といったところまで戻って確認します。
ここが非常に重要です。
「結果が悪い=もっと頑張る」ではなく、どこに原因があるのかを見分けるために指標を使います。

指標は少なくてよい
事業化の状況を細かく見ようとすると、管理する数字がどんどん増えていきます。
問い合わせ件数、訪問件数、商談数、見積件数、成約率、売上、利益率、満足度……。
数字を増やせば管理精度が上がるとは限りません。見る数字が多すぎると、集計すること自体が仕事になり、本当に重要な変化を見落としやすくなります。
複雑にせず、理解しやすく、測定しやすいものを選ぶことを心がけてください。
まずは、
この数字が悪化したら、事業化がうまく進んでいないと判断できるか
という観点から絞ります。
事業化の段階によって見る指標は変わる
新規事業では、最初から売上だけを見ても十分な判断ができません。
まだ販売前であれば、売上はゼロで当然です。
その段階では、
- 顧客から必要な情報が集まったか
- 必要な品質を実現できたか
- 原価目標に近づいているか
- 提供体制が整っているか
といったことを見る方が重要です。
販売を始めたら、
- 問い合わせ
- 提案
- 試験導入
- 受注
- 顧客の評価
へ重点が移ります。
本格展開に入れば、
- 売上
- 利益
- 継続利用
- 品質
- 生産・提供能力
などがより重要になります。
つまり、事業化が進むにつれて、見る数字も変えていく必要があります。
3ページ目で作成した事業化ロードマップと合わせて考えると整理しやすくなります。
KPIは事業化ストーリーとつなげて設定する
指標を単独で決めるのではなく、事業化ストーリーとつなげて設定します。
例えば、
必要な営業体制を整える
↓
顧客への提案を増やす
↓
商談を増やす
↓
新規顧客を獲得する
↓
売上を増やす
というストーリーであれば、それぞれについて、
営業体制 → 担当者・活動時間
提案 → 提案件数
商談 → 商談件数
顧客 → 新規顧客数
事業成果 → 売上・利益
と確認できます。
これなら、売上だけを見るよりも、どこまで予定どおり進み、どこから崩れているのかが分かりやすくなります。

「何をするか」まで決める
指標を決めただけでは、事業は動きません。
成果指標を実現するために、具体的に何をするのかも決めます。
例えば、
成果:新規顧客を増やす
取り組み:対象顧客を整理し、ヒアリング・提案を行う
確認:毎月の提案件数、商談件数を確認する
という形です。
さらに、
誰が担当するのか
いつまでに行うのか
を決め、ロードマップへ落とします。
進捗確認では「行動」と「成果」を並べて見る
定期的な確認では、次の順番で見ると整理しやすくなります。
1.予定した行動はできたか
まず、決めた取り組みが実際に行われているかを確認します。
できていなければ、その理由を確認します。
時間不足なのか。
担当が曖昧なのか。
別の業務が優先されたのか。
そもそも実行が難しい計画だったのか。
2.行動した結果、成果は出たか
行動できていた場合は、その結果として狙った変化が起きているかを確認します。
3.行動と成果の関係を確認する
十分に行動しているのに成果が出ていなければ、取り組みの方法や、その前提となっている考え方を見直します。
先行指標と成果指標を対応させ、実施状況と達成状況の両方を確認することが重要です。
計画を守ることより、見直すことの方が重要な場合もある
新規事業では、最初に立てた計画がすべて正しいとは限りません。顧客から想定外の反応が返ってくることもあります。
予定していた販売方法が機能しないこともあります。
実際に提供して初めて、原価や業務負担が分かることもあります。
そのため、進捗管理は、「計画との差を指摘するため」だけに行うものではありません。
結果を見て、
行動を変える
ロードマップを変える
事業化ストーリーを修正する
必要があります。
場合によっては、そもそもの事業の進め方まで戻って考え直します。
先行指標と成果指標の確認を通じて、アクションプランだけでなく、戦略自体も含めて見直すことも重要です。
進捗確認を事業化のサイクルにする
事業化は次のように進みます。
事業化のゴールを決める
↓
事業化ストーリーを描く
↓
ロードマップを作る
↓
市場・技術・資金・社内の壁を確認する
↓
実行する
↓
成果と行動を測る
↓
見直す
↓
再び実行する
この繰り返しによって、新しい商品・サービスを継続して売上や利益を生み出す事業へ育てていきます。
まとめ|成果が出たかだけでなく、なぜその結果になったのかを見る
新規事業の進捗管理では、売上や利益だけを確認しても十分ではありません。
目標
↓
成果指標
↓
具体的な行動
↓
行動の進捗
をつなげて確認します。
そして、
行動できていないのであれば、実行方法や体制を見直す。
行動できているのに成果が出ていないのであれば、商品・顧客・価格・提供方法などを見直す。
この違いを見分けることが重要です。
KPIは、社員を評価するためだけの数字でも、計画どおり進んでいることを示すための数字でもありません。
事業化のどこに問題があり、次に何を変えるべきかを判断するための材料として使います。
新規事業は、最初の計画をそのまま実行すれば完成するものではありません。
実行し、測り、見直しながら、少しずつ事業としての完成度を高めていきます。
