新規事業の事業化ストーリーの作り方|売上・利益までの道筋をつなぐ
新規事業の事業化を進めると、やるべきことが次々に出てきます。
営業体制を整える。人材を育成する。販売方法を考える。品質を安定させる。外部企業と連携する。原価を下げる。
どれも必要な取り組みですが、個別に考えているだけでは、「それを実行すれば、本当に事業として成立するのか」が見えにくくなります。
そこで必要になるのが、事業化までの道筋を一つの流れ(事業化ストーリー)として整理することです。

事業化ストーリーとは
事業化ストーリーとは、
何を整えれば
↓
どのような仕組みができ
↓
顧客にどのような変化が起こり
↓
最終的にどのような事業成果につながるのか
を整理したものです。
例えば、
必要な人材・技術を整える
↓
安定して販売・提供できる仕組みを作る
↓
顧客に選ばれ、継続して利用してもらう
↓
売上・利益を確保する
という流れです。重要なのは、一つ一つの取り組みではなく、取り組み同士がつながっているかを見ることです。

なぜ「やることの一覧」だけでは不十分なのか
新規事業では、事業化計画を作っているうちに、施策が増えていくことがあります。
「営業を強化する」「人材を育成する」「販売チャネルを増やす」「業務を効率化する」といった施策です。
しかし、
営業を強化する→ 何が変わるのか。
人材を育成する→ それがどう顧客価値につながるのか。
販売チャネルを増やす→ 本当に売上や利益につながるのか。
ここまで考えなければ、施策を実施すること自体が目的になってしまいます。
事業化ストーリーでは、
「これを行うと、次に何が変わるのか?」
を繰り返し確認します。
その結果、最終的な売上や利益までつながらない取り組みや、逆に途中で抜けている重要な取り組みを見つけやすくなります。
事業化ストーリーは4つの要素で考える
事業化に必要な要素を細かく分けすぎると、かえって分かりにくくなります。そこで、まずは次の4つに整理します。
1.事業成果|どのような事業にしたいのか
最初に、事業化した結果として何を実現したいのかを考えます。
例えば、売上、利益、新規顧客数、継続顧客数などです。ただし、単に「売上を増やす」とするのではなく、
いつまでに、どの程度の状態を目指すのか
まで考えておくことが重要です。ここが「事業化ストーリー」のゴールになります。
2.顧客成果|顧客に何が起これば事業成果につながるのか
売上や利益は、会社の中だけで生まれるものではありません。
顧客が商品・サービスを知り、興味を持ち、購入し、価値を感じることで初めて売上につながります。
そのため、
どのような顧客に
どのような価値を感じてもらい
どのような行動を取ってもらう必要があるのか
を考えます。
例えば、「問い合わせが増える」「試してもらえる」「購入してもらえる」「継続利用してもらえる」といった変化です。
ここでは、自社が何をするかではなく、顧客側で何が起きる必要があるのかを考えることがポイントです。
3.提供する仕組み|顧客成果を生むために何を作るのか
次に、その顧客成果を実現するために、自社の仕事をどう変える必要があるのかを考えます。
商品・サービスの開発だけではありません。
販売方法、営業活動、供給体制、品質管理、顧客対応、アフターサービスなども含まれます。
例えば、「顧客に安心して導入してもらいたい」
のであれば、
説明方法を整える、試用できる仕組みを作る、問い合わせ対応を整備する、といった取り組みが必要になるかもしれません。
事業化では、商品を作るプロセスだけではなく、顧客に価値を届ける一連の仕組みを考えることが重要です。

4.経営資源|その仕組みを動かすために何が必要なのか
最後に、必要な仕組みを実現するための経営資源を確認します。
人材、技術、ノウハウ、設備、情報、資金、外部パートナーなどです。
例えば、新しい販売方法を始めるのであれば、その方法を実行できる人材やノウハウが必要です。
新しいサービスを提供するのであれば、業務を担当する人員や管理方法が必要になるかもしれません。
ここで重要なのは、
「人材育成をすること」自体を目的にしないこと
です。
何のために人材を育てるのか。
どの業務を実現するために、どの能力が必要なのか。
そこまでつなげて考えます。
事業化ストーリーは「ゴールから逆算」して作る
STEP1 事業化のゴールを決める
まず、この新規事業を将来どのような事業にしたいのかを考えます。
単に「売上をいくらにするか」を決めるだけではありません。
例えば、
- 将来の主力事業にする
- 既存事業に次ぐ新しい柱にする
- 新しい顧客層を開拓する
- 新たな事業領域へ進む足掛かりにする
- 新規事業を通じて社内の開発力や営業力を高める
など、この事業によって会社をどのような状態にしたいのかまで考えます。
そのうえで、
何を実現することが、この事業の成功なのか
を明確にします。
例えば、新しい顧客を増やすことが重要なのか、一定の売上・利益を生み出す事業に育てることが重要なのかによって、優先して取り組むことは変わります。
事業化では、途中でさまざまな判断が必要になります。そのときに立ち戻る基準になるのが、この事業のゴールです。
「どこまで育てる事業なのか」「この事業によって会社をどう変えたいのか」を最初に整理しておくことで、その後の事業化ストーリーやロードマップも作りやすくなります。
STEP2 必要な顧客成果を考える
その事業成果を実現するためには、顧客に何が起きる必要があるのかを考えます。
「認知してもらう」だけでよいのか。
「購入してもらう」必要があるのか。
「継続利用してもらう」ことまで必要なのか。
これらを事業成果から逆算します。
STEP3 必要な提供の仕組みを考える
その顧客成果を生むために、どのような業務や仕組みが必要なのかを考えます。
販売、供給、品質、顧客対応などを含めて整理します。
STEP4 必要な経営資源を考える
最後に、その仕組みを動かすための人材、技術、情報、資金、外部連携などを整理します。
事業成果
↑
顧客成果
↑
提供する仕組み
↑
経営資源
という順番で逆算します。

作った後は、反対方向から確認する
事業化ストーリーを作ったら、今度は下から上へ確認します。
例えば、
必要な人材や技術を整える
↓
本当に提供する仕組みが改善するか
↓
その結果、本当に顧客の行動や評価が変わるか
↓
その結果、本当に売上・利益につながるか
という順番です。
ここで途中のつながりが説明できなければ、ストーリーのどこかに無理があります。
略を組み立てた後に、因果関係を下から上へ、さらに上から下へ確認し、一つのストーリーとして成立しているかを確認することが重要です。
つまり、
作るときはゴールから逆算する
確認するときは現場から成果まで順にたどる
という二方向で見ると、抜けや無理を見つけやすくなります。
「原因」と「結果」がつながっているか確認する
事業化ストーリーでは、矢印を引けばよいわけではありません。
その矢印に
「Aが実現すると、なぜBが実現するのか」
を説明できることが重要です。
例えば、
営業担当者を増やす
↓
売上が増える
だけでは、途中が抜けています。より丁寧に考えると、
営業体制を整える
↓
顧客への提案件数が増える
↓
商談機会が増える
↓
受注件数が増える
↓
売上が増える
となります。
このように途中をつなげることで、
「営業体制は整えたのに提案件数が増えていない」
「提案件数は増えたのに商談になっていない」
といった問題も見つけやすくなります。

すべてを事業化ストーリーに入れない
新規事業では、検討を進めるほど「やった方がよいこと」が増えていきます。
しかし、すべてを事業化ストーリーに入れると、何が重要なのか分からなくなります。戦略に関係しないものを除き、優先順位を明確にすることも重要な作業です。
事業化ストーリーに入れるのは、事業化の成否に大きく影響するものを中心にします。
判断するときは、次のように考えます。
- これができなければ事業化が止まるか
- 顧客に選ばれるために重要か
- 売上・利益に大きく影響するか
- 他の取り組みの前提になっているか
- 今後、進捗を確認する必要があるか
該当しないものまで無理に盛り込む必要はありません。
重要な道筋だけを見えるようにすることが、事業化ストーリーを作る目的です。
事業化ストーリーには「確認できる目印」を置く
事業化ストーリーができたら、それぞれの重要な部分について、
「できたかどうかを何で判断するのか」
を考えます。
例えば、
顧客に関心を持ってもらう → 問い合わせ件数
試してもらう → 試験導入件数
購入してもらう → 受注件数
継続してもらう → 継続率
といった具合です。
ただし、この段階で大量のKPIを設定する必要はありません。
まずは、事業化ストーリーの中で特に重要なポイントだけを確認できる状態にすることが大切です
具体的なKPIや進捗管理については、別ページで詳しく解説します。
事業化ストーリーを作ると、ロードマップも作りやすくなる
事業化ストーリーは、
「何が必要か」を整理するものです。
ただし、実際に事業化するためには、「どの順番で進めるのか」も決めなければなりません。
例えば、販売体制を本格的に整える前に、顧客から十分な反応が得られるかを確認した方がよい場合があります。
大きな設備投資をする前に、価格や需要を検証した方がよい場合もあります。
そこで次に、
事業化ストーリーで整理した取り組みを時間軸に並べ、どの段階で何を確認するのか
を決めます。
これが事業化ロードマップです。
まとめ|「何をするか」ではなく「どうつながるか」を考える
事業化では、必要な取り組みを考えるだけでは十分ではありません。
大切なのは、
経営資源
↓
提供する仕組み
↓
顧客成果
↓
事業成果
が、一つの流れとしてつながっていることです。
事業化ストーリーを作ることで、
何が不足しているのか
どこが事業化のボトルネックになっているのか
何を優先すべきなのか
が見えやすくなります。
最初から完璧なストーリーを作る必要はありません。
実際の顧客の反応や事業化の進捗を確認しながら、仮説が違っていれば修正していきます。
事業化ストーリーは、一度作って終わる計画図ではなく、新規事業を育てながら更新していく「事業化の設計図」です。
