神奈川県の経営革新計画:予備入力票とは何か・900文字制限が意味することと本申請との使い分け
神奈川県の経営革新計画申請には、他県にない「予備入力票」という書類があります。
電子申請にあたっては、GビズIDおよび予備審査後に発行される申請用パスワードが必要になります。
パスワードは予備審査通過後に発行されるため、予備入力票の段階で計画の骨格が伝わらないと、そもそも本申請に進めません。
このページでは予備入力票の文字数制限が何を意味するのか、本申請との役割の違いをお伝えします。
予備入力票とは
予備入力票は電子申請システムの入力画面に対応した神奈川県独自の様式です。予備審査時に提出します。

予備入力票はWordファイル形式で、別表3作成用ツール(Excel形式)とあわせて準備します。添付書類として直近2期間の決算書なども必要です。(詳細は最新の申請要領をご確認ください。)
文字数の比較(実測値)
以下は予備入力票を実際に確認して得た数字です。
| 項目 | 神奈川県予備入力票 | 国の電子申請システム |
| テーマ | 150文字まで(40文字程度推奨) | 150文字まで |
| 経営革新の目標 | 270文字まで(158文字程度推奨) | 270文字まで |
| 当社の現状と経営課題 | 900文字まで | 1,935文字まで(約2.1倍) |
| 経営革新の具体的内容 | 900文字まで | 2,021文字まで(約2.1倍) |
| 売上高計画等の補足 | 別紙可 | 別表3・3-2に相当 |
テーマと目標の上限は同じですが、現状・課題・具体的内容の3項目が本申請の約半分の文字数しかありません。
予備入力票と本申請の文字数が違う理由としては、下記2つの可能性が考えられますが、神奈川県からは正式な情報が発信されておりません。
➀ 予備入力票で説明しきれなかった詳細情報を記載する
➁ 見出しや改行などで見た目を整えるためのバッファー
本サイトでは、➀と仮定して説明させて頂きます。【参考】予備入力票の記載例分析
理由としては、②だとすると文字数が多すぎる点、➀は他の補助金申請にも文章を活用可能と考えたためです。
神奈川県の公式情報が確認でき次第、追記・修正させて頂きます。
この差が意味すること
①神奈川県の申請は実質3段階

「後から詳しく書けばいい」と考えると、予備入力票の段階で詰まります。
②テーマは「40文字程度」で完結させる
上限150文字に対して40文字程度を推奨しています。
推奨の意味:
「書ける」のに「40文字程度」を求めている → 簡潔さと焦点の明確さを求めている
東京都の様式でも同様の指定があります。
30〜40文字で「何をする計画か」が一目で伝わることが最初のハードルです。
③目標欄は「158文字程度」が審査員にとって読みやすい
上限270文字に対して158文字程度を推奨しています。
詰め込みすぎると読みにくくなる。
推奨文字数の存在は「簡潔さ」を求めていることの表れです。
目標欄に書くべき内容:
・付加価値額の伸び率(3年・4年・5年計画)
・給与支給総額の伸び率
・計画終了年度の経常利益が黒字であること
※経常利益の黒字化は承認基準として明記されています
④900文字でできること・できないこと
900文字で伝えられること
・現状の課題(数字1〜2個)
・何が新しいのか(新規性の核心・1文)
・なぜできるのか(実現可能性の結論・1文)
・数値目標(結論のみ)
900文字では書けないこと
・市場背景の丁寧な説明
・競合比較の詳細
・設備投資の詳細な根拠
・売上積み上げの計算過程
900文字の予備入力票は「3要素(新規性・実現可能性・数字)の結論を凝縮できるか」を最初に問うています。
⑤本申請(約2,000文字)の役割
本申請では文字数が約2倍になります。
【本申請で充実させるべき内容】
・新規性の根拠 (競合との比較・技術の詳細)
・実現可能性の根拠 (人員体制・調達方法・スケジュール)
・現状分析の詳細 (過去3期の財務状況・既存事業の課題)
・市場分析・競合比較
【重要な原則】
・予備入力票と本申請の方向性・数字は一致させる
・矛盾する内容を本申請で追加しない
予備入力票は「下書き」ではなく「骨格を示す別の書類」として最初から設計する必要があります。
⑥売上根拠は別紙に委ねる設計
神奈川県の予備入力票では売上高計画等の補足資料に別紙を使えます。
なぜ別紙に委ねるべきか:900文字を数値の説明で使い切ると新規性・実現可能性の説明が書けなくなる
本文での書き方:
「単価○円×月○件×12ヶ月= 初年度売上○百万円。 積み上げ根拠は別紙1参照」
別紙に入れると効果的な内容:
・売上の積み上げ計算(単価×数量×期間)
・見積書(設備投資がある場合)
・取引先への意向確認の記録
・市場規模のデータ(出典を明記)
誘導の書き方:
「別紙参照」だけでは不親切。「別紙1・P3・表2参照」とページ・図番号まで明記する
⑦ 別紙資料について
「経営革新計画の承認手続と支援メニューのご案内」を読むと、予備審査の段階で別添資料について触れているのは、実は2か所しかありません。
まず、申請相談窓口での確認・助言(面談)の項目で、「申請相談窓口での面談の際には、必要に応じて商品の写真や企画書等の説明資料もあわせてお持ちいただくことをお奨めします。」と記載されています。補足説明資料が必須とは記載されていませんが、予備入力票だけで説明しきるのは困難なため、実務上は必須と考えるべきです。
もう一つが、記載例の<売上計画等の補足説明>の部分に、「※上記の枠を超える場合は別紙としてください。」と記載されている部分です。実現可能性の説明の中で、特に説明が難しいのが売上の根拠になりますので、計画の内容にもよりますが、ほとんどの計画で、別紙による補足説明は必須と考えるべきです。
予備入力票・900文字の書き方
3要素を「結論だけ」で書く練習が必要です。
問題点:
200文字使って3要素が一つも伝わっていない
・「困難と判断した」→根拠の数字がない
・「地域経済への貢献」→数値目標がない
900文字の中でこの密度では情報が薄すぎる
改善点:
・数字が入っている
・新規性(独自配合・特許)
→実現可能性(外注先・ターゲット)
→数字(別紙誘導)の流れが自然
・装飾的な表現なし
・改行なしで読める一文の流れ
本申請(約2,000文字)で書くべきこと・書かないべきこと
予備入力票の通過後、本申請では文字数が約2倍になります。この追加分をどう使うかが承認の分かれ目です。
追加できる文字数の確認
当社の現状と経営課題
予備入力票 900文字
本申請 1,935文字
→ 約1,000文字分の余白
経営革新の具体的内容
予備入力票 900文字
本申請 2,021文字
→ 約1,100文字分の余白
この追加分で何を書くか・書かないかが本申請の設計の核心です。
書くべきこと
「現状と経営課題」の追加分(約1,000文字)
①既存事業の詳細な状況
・過去3期の財務の流れ
(売上・営業利益・付加価値額の推移)
・赤字・低収益の場合はその理由
・主要顧客・取引先の状況
②課題の構造的な説明
・なぜ今の事業だけでは限界があるのかの論理
・数字で示せる部分は数字で示す
例:既存事業の利益率が○%まで低下
③新規事業を始める必然性
・今やらなければならない理由
・自社の強みがなぜこの新規事業と結びつくのかの説明
「経営革新の具体的内容」の追加分(約1,100文字)
①新規性の根拠の詳細
・競合他社との具体的な比較 (性能・価格・サービス内容)
・自社技術・ノウハウの詳細
・特許・許認可の状況
②実現可能性の根拠の詳細
・人員体制の具体的な説明(誰が・何をするのか)
・設備投資の必要性と内容
・外注先・連携先の実績・信頼性
・法規制の確認状況
③売上計画の補足
・取引先への意向確認の事実
・価格設定の根拠
・詳細な積み上げ計算は別紙に委ねる
本文は結論+「別紙○・P○参照」にとどめる
書くべきでないこと
絶対に書くべきでないもの
①予備入力票と矛盾する内容
・数字が変わっている
・事業の方向性が変わっている→ 審査員は予備入力票と本申請の両方を見ている
・ 矛盾があると計画全体の信頼性が下がる
②予備入力票にない新しい事業の追加
→ 予備審査を通過した内容の範囲内で充実させる
→ 新しい事業を追加したい場合は窓口に相談する
③確認が取れていない法規制の記述
→ 確認済みなら「確認済み」と明記
→ 未確認のまま「申請予定」等でぼかして書かない
書いても逆効果なもの
①一般論・社会背景の説明
NG例:「昨今の物価高騰により」「コロナ禍以降の市場変化で」「SDGsへの対応として」
理由:「審査員は社会背景を知っている」「文字数の無駄遣いになる」
②感情的・抽象的な表現
NG例:「〜を目指します」「〜に貢献できると考えます」
理由:数字に変換できない表現は根拠にならない
③水増し文章
「900文字を2,000文字に膨らませる」という発想で書かない
理由:
追加すべき根拠・詳細がない場合は短くてよい
薄い内容を長く書くと読みにくくなり逆効果
④売上計算の全過程を本文に書く
NG例:「単価○円×月○件×12ヶ月×3年= ○百万円。このうち○%が粗利で…」
理由:
計算過程は別紙に委ねる。本文は結論と別紙への誘導だけにする。
本申請の設計イメージ
予備入力票(900文字):
結論だけ→ 新規性・実現可能性・数字の核心
本申請(約2,000文字):
結論+根拠・詳細・背景 → 予備入力票で書けなかった 「なぜそうなのか」を加える
別紙:
数値の証拠 → 売上計算の過程・見積書・ 取引先への意向確認記録等
書くべきでないこと:「予備入力票との矛盾・一般論・ 感情表現・水増し」
令和8年4月からの新制度:特別モニター評価制度
神奈川県では令和8年4月から「特別モニター評価制度」を開始しました。経営革新計画の承認を受けた企業を対象に、さまざまな企業に所属する中小企業診断士を中心に、承認を受けた商品やサービスなどを利用者視点で評価します。
この制度の活用価値:
・承認後に自社の商品・サービスを
中小企業診断士に評価してもらえる
・客観的なフィードバックが得られる
・改善点の把握につながる
詳細は神奈川県HPでご確認ください。
