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自社作成vs専門家依頼の判断基準

経営革新計画の申請を検討した経営者が最初に直面する判断の一つが「自社で書くか、専門家に依頼するか」です。どちらが正解かは会社の状況によって異なります。

第1章 自社作成のメリットと限界

1-1. 自社作成が向いているケース

➀ 計画書作成に集中できる時間がある
➁ 事業内容を文章で説明する経験がある
➂ Excelで財務計画を組める人材がいる
➃ 承認まで多少時間がかかっても問題ない
➄ 費用を抑えたい

1-2. 自社作成にかかる工数の現実

制度の理解・情報収集:10〜20時間
計画書の骨子作成:10〜15時間
本文の執筆:15〜25時間
財務計画の作成:10〜20時間
受付機関との修正対応:10〜20時間
─────────────────
合計:50〜100時間程度

本業と並行して進める場合、2〜4ヶ月かかることを見込んでください。

1-3. 自社作成の最大のリスク

自社作成の最大のリスクは「審査官の視点で読み返すことが難しい」ことです。その結果、受付機関との修正回数が増え承認まで時間がかかるケースが多くなります。

第2章 専門家依頼のメリットと注意点

2-1. 専門家依頼の費用感

計画書のレビュー・アドバイスのみ:5〜15万円程度
計画書の作成支援(共同作成):15〜30万円程度
計画書の作成から受付機関対応まで一括:30〜50万円程度

2-2. 専門家に依頼する場合の注意点

注意点①

経営革新計画の実績を確認する
補助金申請の支援実績は豊富でも、経営革新計画の支援経験が少ない専門家がいます。

注意点②

計画書の「中身」を丸投げしない
事業の内容・強み・数値の根拠は経営者自身が提供する必要があります。

注意点③

修正対応への関与を確認する 受付機関との修正プロセスに専門家が同席・対応してくれるかどうかを確認してください。

2-3. 「自社作成+専門家レビュー」という選択肢

費用5〜15万円程度で「審査官の目線でのチェック」というメリットを得られます。自社作成に自信がある場合でも検討する価値があります。

第3章「専門家に依頼する場合に知っておくべきこと」

3-1. 実効性のある計画でなければ、承認のメリットは薄い

専門家に依頼する・自社で作る、いずれの場合でも共通して言えることがあります。

実態のない計画では、承認を取っても意味がありません。

たとえば低利融資制度を利用しようとしても、実態の見えない計画に融資する金融機関はいません。そもそも低利融資は新規事業分にしか適用されないため、中身のない計画では恩恵を受けられません。

実効性のある計画
金融機関が融資を検討できる
承認後の支援措置を実際に活用できる
フォローアップで実績を示せる

実態のない計画
融資審査で落ちる
支援措置を活用できない
計画期間中に行き詰まる

せっかく時間と労力をかけて申請するのであれば、実際に事業として機能する計画を作ることが、最も合理的な選択です。

3-2. 専門家選びで注意すべきこと

専門家(中小企業診断士・行政書士等)に依頼する場合、以下の点に注意が必要です。

認定経営革新等支援機関(認定支援機関)として登録されている専門家でも、以下のような問題行為は中小企業庁に通報の対象となります。

通報対象となる主な問題行為
・名前貸し業務や単なる窓口業務など形骸化した支援業務を行っている
・事業計画への虚偽記載・事実の隠蔽を教唆・指示している
・支援業務に関する請求対価が実費から著しく乖離している
・契約内容(金額・条件等)が不透明
・中小企業者に対して強引な働きかけを行っている

費用が極端に安い・高い、契約内容が不明確、「必ず承認される」と断言するといった専門家には注意が必要です。

信頼できる専門家の見分け方:

□ 経営革新計画の支援実績を具体的に話せるか
□ 費用の内訳を明確に説明できるか
□ 「必ず通る」という断言をしていないか
□ 経営者自身が計画を理解することを重視しているか
□ 契約書の内容が明確か


3-3. 「丸投げ」は見抜かれる

専門家に計画書の作成を丸投げした場合、受付機関との打ち合わせで見抜かれることがほとんどです。
審査実務の経験から言うと、受付機関の担当者は以下のサインで気づきます。

サイン① 言葉の解像度の乖離

計画書には立派な経営用語・論理的な文章が並んでいるのに、面談・電話での質疑応答で経営者自身がその内容を自分の言葉で説明できない。

サイン② 現状分析の温度差

企業の強みや現場の課題に関する記述と、実際の業務でのリアルな状況にギャップがある。

サイン③ 数値計画の根拠を把握していない

売上目標や投資効果の算出根拠を尋ねられた際、経営者自身が具体的な背景を把握していない。

3-4. 丸投げでも承認される現実とその後のリスク

正直に言うと、書類上のロジックが通っていて数値目標の整合性が取れていれば、専門家が作成した計画書であっても承認されることがあります。

審査機関は提出された書類の内容に基づいて客観的に審査します。「専門家の代筆に違いない」と直感しても、それを客観的証拠として証明することは難しく、書類の完成度が要件を満たしている以上、承認せざるを得ないのが実情です。

しかし、その後に問題が発生します。

丸投げ計画書の承認後に起きること

計画の形骸化:
 承認されても経営者が内容を理解しておらず、 実行フェーズで行き詰まる

フォローアップでの発覚:
 計画期間中の進捗報告の段階で 計画倒れになるケースが少なくない

融資審査での失敗:
 金融機関の審査で計画の実態を 説明できず、融資を受けられない

補助金審査での矛盾:
 ものづくり補助金等の審査で計画内容を説明できず整合性の問題が浮上する

承認を取ることが目的ではなく、事業を実際に成長させることが目的です。そのためには、経営者自身が計画を深く理解していることが不可欠です。

3-5. 専門家選びで注意すべきこと

中小企業診断士・行政書士など、経営革新計画の作成支援を行う専門家の中には、**認定経営革新等支援機関(認定支援機関)として国に登録されている機関があります。

認定支援機関であることは一定の信頼の目安になりますが、登録されているからといって全ての機関が適切な支援を行っているとは限りません。

中小企業庁は、以下に該当する認定支援機関を通報対象としています。これは裏を返せば、経営者が専門家を選ぶ際の「チェックリスト」として活用できます。

【通報対象となる問題行為=選んではいけない専門家の特徴】

❌ 法令違反
 刑法(詐欺等)・弁護士法(非弁行為)
 その他の法令に違反している

❌ 形骸化した支援
 名前貸し業務・単なる窓口業務・申請代行等の実態のない支援を行っている

❌ 不正な支援内容
 事業計画への虚偽記載・事実の隠蔽等を教唆・指示している

❌ 不当な請求
 支援業務に関する請求対価が実費から著しく乖離している

❌ 不透明な契約
 支援業務に関する契約内容(金額・条件等)が不透明

❌ 強引な働きかけ
 中小企業・小規模事業者に対して強引な勧誘・営業を行っている

出典:中小企業庁「認定経営革新等支援機関に関する通報窓口」

【信頼できる専門家を見分ける実務的なポイント】

上記の通報基準を踏まえた上で、実務的な観点からも確認しておくべき点があります。

□ 経営革新計画の支援実績を具体的に話せるか(件数・業種・承認率など)
□ 費用の内訳を明確に説明できるか(何に対していくらかかるのか)
□ 「必ず承認される」と断言していないか(断言する専門家は要注意)
□ 経営者自身が計画を理解することを重視しているか (丸投げを推奨する専門家は避ける)
□ 契約書の内容が明確か(口頭のみ・曖昧な条件は危険)
□ 修正対応まで含めた支援内容か(計画書作成のみで終わる場合は確認が必要)

問題のある専門家に依頼した場合のリスク

・虚偽記載・事実の隠蔽が含まれる計画書は発覚した場合に承認取消のリスクがある
・「名前貸し」で作成された計画書は受付機関との打ち合わせで破綻しやすい
・不当な高額請求で費用対効果が得られない場合がある

認定支援機関への問題行為の報告は、認定支援機関の主たる事務所の所在地を所管する経済産業局等に行うことができます。詳細は中小企業庁の公式サイトをご確認ください。

専門家との役割分担について

専門家を活用する場合の最も有効なアプローチは、役割を明確に分担することです。

経営者が担うべき「根幹」:

経営者が担うべき「根幹」:
・なぜこの事業を行うのか(経営者の理念・熱意)
・誰に何をどのように提供するか(事業のコンセプト)
・現場でしか分からない課題と強み
・計画を実行するコミットメント

横浜・川崎の地域特性を計画書に昇華させる

横浜・川崎エリアは、製造業・物流・IT・バイオ・観光など多様な産業が集積する、国内屈指の経済圏です。この地域特性を経営革新計画に盛り込むことは、単なる「場所の説明」ではなく、事業の必然性と実現可能性を証明する強力な武器となります。

専門家が担う「枝葉」:
・コンセプトの言語化と構造化(審査基準に合わせた整理)
・数値計画の論理構築(売上目標・付加価値額の計算根拠)
・情報の補強・文章化(市場データ・統計の肉付け)

根幹の部分まで専門家が作ってしまうと、書類上の「代筆」になります。経営者が根幹を握り、専門家が枝葉を整える。この分担で初めて「地に足のついた実現可能性の高い計画」が完成します。

横浜・川崎エリアは、製造業・物流・IT・バイオ・観光など多様な産業が集積する、国内屈指の経済圏です。この地域特性を経営革新計画に盛り込むことは、単なる「場所の説明」ではなく、事業の必然性と実現可能性を証明する強力な武器となります。

根幹(コンセプト):企業が握る
 ↓
枝葉(言語化・数値の整合性):専門家が整える
 ↓
経営者が自分の言葉で説明できる計画書
 ↓
受付機関・審査会で納得感がある
 ↓
承認後も実際に事業として機能する

まとめ

➀ 時間に余裕があり文章・財務計画の作成経験がある ⇒ 自社作成を基本に、提出前にレビューを依頼
➁ 補助金との同時申請でスケジュールがタイト ⇒ 専門家への一括依頼を検討
➂ 費用を抑えたいが一人で進めるのは不安 ⇒「自社作成+レビュー」が最もコスパが高い
➃ 専門家に絶対丸投げしてはいけない部分がある ⇒「根幹は企業、枝葉は専門家」